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【暴走車に警官発砲】容疑者は「彼女のために警官に突っ込む」も証拠不十分で釈放の過去

友人が語る容疑者の素顔(時事通信フォト)

友人が語る容疑者の素顔(時事通信フォト)

大阪府八尾市で起きた盗難車の“暴走”事件では、警察官2人が発砲し石橋健太容疑者(41)が死亡したことで、拳銃使用が適切だったかどうか、議論が巻き起こっている。すでに指名手配されていたことなどが報じられているが、事件の背景についてフリーライターの鈴木智彦氏がレポートする。

 * * *
 1月13日、大阪府警のパトカーが、平野区の路上で盗難車を発見した。職務質問を試みるも逃走され、白昼のカーチェイスが開始された。逃走経路の防犯カメラは、住宅地を暴走する白いトヨタ・アクアと、追跡するパトカーの姿を捉えていた。

 パトカーはしばらくして赤信号でストップしていた盗難車に追い付いたという。警察官が再び職務質問をしようとする。

 が、運転手は応じないばかりか車をリバースギアに入れ、バックでパトカーに激突させ、車を前後に動かして逃走しようとした。八尾署の警部補と巡査長が降車し「止まらないと撃つ」と警告をしてもストップしなかったため、午後1時20分頃に2人の警官が発砲した。

 5発発射した弾丸のうち、3発が運転手に命中している。現場付近に住む40代の女性は、はっきりとその銃声を耳にしている。

「けっこう大きな音でしたわ。パンパンパンいうて。このへんは工場も多いし、平日の昼間だったから、それを聞いてけっこうな人が出てきてた。車はぐちゃぐちゃでしたね。野次馬たちが……私もそうですけど、警察官が撃ったらしいとは言ってた。発砲を目撃した人もいた」

 直後、警官は盗難車を運転していた石橋健太容疑者(41)を公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕している。容疑はそれだけではない。石橋容疑者はこの時に乗っていた盗難車と同型の車を大阪湾に捨てた容疑で、指名手配されていたのだ。

 すぐさま病院に運ばれたが、銃弾は腹部に命中して胃や肝臓を貫通しており、死亡が確認された。死因は失血死で体内から2発の銃弾が見つかっている。

 状況や目撃者の証言を総合すると威嚇射撃ではなく、射殺(もやむなし)という命令が出ていたとしか思えない。

 というのも、昨年9月、石橋容疑者は同じような事件を起こしていたのだ。石橋容疑者の友人が言う。

「石橋さんの彼女が職質を受けているとき、彼女を奪還するために覆面をかぶり、盗難車で突っ込んだりしたらしいんです。その事件で殺人未遂で指名手配され、逮捕されたけど、覆面のせいで顔が分からず証拠不十分で釈放された。彼はステージ4の甲状腺癌で、長くないから実質的な執行停止、放っておけという判断だったかもしれない」

 釈放後、石橋容疑者は大阪の病院に入院したが、揉め事を起こして退院させられたらしい。その後、身体の調子が悪く他の病院に行こうとしても、一切受け付けてもらえなかったという。

「抗がん剤で毛が抜けて坊主になり、それからずっとその髪型で通していた。胸や肩がパンパンに腫れていて、かなり痛かったはずです。昨日は奈良、今日は和歌山とあちこちの病院を回っても診察拒否で、その最中にこの事件が起こった」(同)

 友人は事件直後、献花するため現場に出向いた。が、一帯は封鎖されていたため、規制線の外側に花束を置いて帰宅したという。事件から3日後の16日、正午過ぎに現場を訪れたがいまだ規制線が張られていた。射殺された道路は通行禁止で、全ての方角をチェックして花束を探したが、どこにも見当たらない。警察が撤去したのだろう。

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