日本人は内臓を支える筋肉が弱い
日本人は意外によく歩いている
さっそく運動を始める前に「日本人は筋力が弱い」とはどういうことか、少し詳しく説明しましょう。
人間の筋肉は細い線維が集まってできています。細い線維には2種類あり、1つは、細く、長く、じっくり働く「マラソン型」、もう1つは、太くて瞬間的に強い力を発揮する「重量挙げ型」です。2種類のどちらが多いかは遺伝子で決まり、人種によって異なります。
日本人の筋肉は約70%が「マラソン型」なので、粘り強く働く代わりに力が弱いのです。これに対して、欧米人やアフリカ人は50〜70%が「重量挙げ型」です。そのため、トレーニングをすると筋肉がすぐに大きくなり、強い力を発揮します。ですが、筋力はあまり持続しません。
日本人は筋肉を強化しにくいとはいえ、ダンベル体操やスクワットなどの筋力トレーニングを通じて筋肉の量が少しでも増えるよう、努めることが大切です。しかし、それ以上に意識すべきは日本人がもともとたくさん持っている「マラソン型」の線維を鍛えることです。これにより、効率よく肺や心臓が強くなり、病気に対する抵抗力やスタミナが高まります。そのために有効なのが、早歩きする、走る、自転車に乗る、泳ぐなどの有酸素運動です。有酸素運動は酸素をしっかり取り込みながらじっくり行う運動のこと。酸素を吸い込むことが重要なので、のんびり歩くくらいではいけません。
少し息がはずむくらい、ちょっと頑張って体を動かすのがポイントです。
現代人は運動不足が叫ばれていますが、大規模な世界調査から、日本人は意外によく歩いていることが判明しました。世界の人の平均歩数が1日4961歩だったところ、日本人は平均6000歩も歩いていて、111の国と地域の中で、香港、中国、ウクライナに続く世界4位でした。日本はジムに通ったりジョギングしたりする人の割合はアメリカなどの国より低いのですが、多少の距離なら歩くことをいとわない人が多いようです。これも、「マラソン型」の筋肉を持っているおかげかもしれません。
有酸素運動を行えば行うほど内臓脂肪が減少するため、高血圧、糖尿病、動脈硬化に関する日本の専門学会はいずれも、有酸素運動をすすめています。特に日本人は遺伝子の関係で糖尿病になりやすく、運動不足は糖尿病の大敵です。あと3000歩、せめて2000歩増やすのが理想ですが、早歩きなら約15分、ジョギングなら約10分で2000歩になります。これならなんとかなりそうですね。連続して実施しなくても、細切れの運動を積み重ねても構いません。