入浴にはさまざまな健康効果が
お風呂が持つ「3つのパワー」
入浴には寝つきをよくする以上の効果があります。海外にも、温泉で療養したり、サウナに入ったりする習慣のある国は存在しますが、日本のように、ほとんどの家庭に湯船がある国は珍しいといわれています。日本に入浴の習慣が根づいた原因として、清潔好きであること、夏は蒸し暑く、冬は乾いて寒い日本の気候に合っていたこと、日本が水に恵まれていたことなどが考えられます。
けれども、最近はシャワーで簡単に済ませる人が多く、さっぱりしたいときはサウナか岩盤浴に行くという話をよく耳にします。サウナや岩盤浴の健康効果は、熱の力で血液の循環がよくなることです。しかし、体が必要以上に温まるため寝つきは悪くなりますし、上がりすぎた体温を下げるのにエネルギーを消費するため疲れます。
心身の疲れを癒したいなら、38℃くらいのぬるいお風呂に入るのがよいのです。サウナや岩盤浴と同じく血液が循環し、新鮮な酸素と栄養が全身に行き渡り、傷ついた細胞の修復が進みます。
これに加えて入浴には、サウナや岩盤浴にはない3つの健康効果があります。1つはマッサージ効果です。お湯に入ると水圧で手足の血液やリンパ液が押し流され、疲労物質を含む老廃物の排出が進みます。もう1つが浮力によるリラックス効果です。水中では重量がおよそ10分の1になり、体を支える骨や筋肉を休ませることができます。
そして3つめが皮膚の汚れを取り去る効果です。ごしごしこすらなくても、お湯につかるだけで汗などの汚れがかなりきれいに落ちます。そうした効果はサウナや岩盤浴、そしてシャワーにはほとんど期待できません。日本のお風呂の健康効果をもっと活用してください。
次回は、日本人が特に気をつけたい病気を取り上げて、その予防法を説明します。
【プロフィール】
奥田昌子(おくだ・まさこ)さん/愛知県出身。内科医。京都大学大学院医学研究科修了。生命とは何か、健康とは何かを考える中で予防医学の理念にひかれ、健診・人間ドック実施機関で30万人以上の診察にあたる。
※女性セブン2023年2月2日号