羽生は2日目に入っても好調な指し回しを続け、藤井を破って1勝1敗のタイに持ち込んだ。異筋の金は、羽生の大局観が藤井を超えた瞬間だった。
羽生は低迷から脱しただけではなく、現在も進化を続けている。今シリーズで藤井とさらに濃く接すれば、新たな化学反応が起こる可能性は十分にある。その時、羽生将棋は真に完成を遂げるのではないか。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
大川慎太郎(おおかわ・しんたろう)/将棋観戦記者。1976年生まれ。出版社勤務を経てフリーに。2006年より将棋界で観戦記者として活動する。著書に『証言 羽生世代』(講談社現代新書)などがある。
※週刊ポスト2023年2月10・17日号