首相官邸「チーム岸田」の陣営(写真/時事通信フォト)
ステルス倒閣運動
司会:岸田内閣が低支持率でもなんとか続いているのは、「ライバル不在」と「鈍感力」のおかげということか。
記者B:いま、岸田さんが一番警戒しているのは茂木敏充・幹事長だろう。茂木さんは国会の代表質問で「児童手当の所得制限撤廃」をぶち上げたが、これは官邸に事前の根回しをしていない独断だったと聞いている。首相側近も「岸田総理は相当イライラしていた」と言っていた。次の総理を狙って、茂木さんが独自の政策アピールを始めたということだ。
記者A:茂木幹事長は“ステルス倒閣運動”をしていると見る官邸スタッフもいる。旧統一教会問題で茂木さんが所属議員と教団の関係について党内アンケートを行なったが、公表された内容が野党やメディアには格好の追及材料となり、岸田首相は批判の矢面に立たされた。これも政権の足を引っぱるためにわざとやったんじゃないかと。
記者D:茂木さんは次の総理は自分だと鼻息が荒く、来年の自民党総裁選で岸田続投を阻止するつもりですよ。キングメーカーの麻生さんにも接近し、「次は自分」を売り込んでいる。岸田さんは次の内閣改造で茂木さんを幹事長に留任させて封じ込めるか、交代させて野に放つか、いまから相当悩んでいるようです。
記者C:麻生さんも「次は茂木がいるじゃないか」と言っているが、茂木さんの自民党内の不人気ぶりは河野太郎氏と互角くらい。なんといってもあのパワハラ体質は役人や自民党の職員、記者たちからも恐れられている。つい最近も、茂木幹事長が自民党本部4階のエレベーターホールでぶら下がり取材に応じていた時、たまたまエレベーターが開いて幹事長番ではない記者2人が談笑しながら出てきた。すると茂木さんがいきなりキレて、「ぶら下がり中だぞ! どうするんだ!」と怒鳴り、中止になりかけた。それなら幹事長室でやればいいのに。
記者D:女性記者には滅茶苦茶優しいんですけどね(笑)。
記者A:霞が関も茂木総理になればたいへんだと戦々恐々としている。自民党の若手議員がこう言っていた。「次の総裁選が岸田、茂木、河野の争いになったら、われわれは究極の選択を迫られることになる」と。
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国民の声が聞こえない鈍感総理の下で、首相官邸はいまや「国の危機管理」も「政権の危機管理」もできず、かといってポスト岸田もダメ候補ばかり。
政治記者たちの目に映った、これが日本の政治中枢の現実なのだ。
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2023年3月10・17日号