国内

多摩地区の水道水から発がん性が疑われる化学物質PFASを検出 米軍の横田基地が汚染源の疑い

(写真/PIXTA)

国分寺市の水道水から発がん性物質が(写真/PIXTA)

 東京の西郊に位置する多摩地区。武蔵野の面影を残す緑多き地域に、いま住民を不安に陥れる事態が持ち上がっている。発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)が2019年、東京都の調査で国分寺市の井戸から1Lあたり101ng(ナノグラム)検出されていた。この数値は、現在の暫定指針値の2倍以上だった。

 この問題で、1月30日、市民団体「多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS)汚染を明らかにする会」は、周辺住民から参加を募って行った血液検査の中間報告を公表した。その結果なんと、調査に参加した国分寺市民65人のPFAS血中濃度の平均が、環境省が2021年に調べた全国平均の約3.7倍の数値だったことが明らかになった。汚染におびえる市民の実情を、同市民団体・国分寺世話人の卯城公啓さんが明かす。

「水道水に得体の知れないものが混ざっていたことに、強い不安を覚えている人が多いです。受検者の1人にスポーツ好きの70代女性がいますが、食べ物に配慮し体形もスリムです。それなのに病院で脂質異常症と診断されました。医師も“なんであなたが”と首をひねるばかりでした。

 そんな中、PFASの問題が発覚したのです。この物質は発がん性があることにとどまらず脂質異常症を引き起こすこともあるとされており、原因物質である可能性が高いと疑っています。多くの受検者が疑心暗鬼になっています」

 そもそも「PFAS」とは何か。科学ジャーナリストの植田武智さんが解説する。

「PFASとは『有機フッ素化合物』の総称で、水や油をはじく性質があり、フライパンのコーティングなどに使われてきました。代表例はPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)と呼ばれるもので、4700種類以上ある。分解されにくく残留しやすい性質から『永遠の化学物質(フォーエバーケミカル)』とも呼ばれています。

 人体への蓄積性が高く、体に入った量が半分に減るまでにかかる期間(生物学的半減期)はPFOAで3.8年、PFOSで5.4年です」

 PFASはどういった健康被害を引き起こすのか。

「アメリカの汚染地域で健康調査が行われ、2012年に次の病状との関連が確認されました。妊娠高血圧及び妊娠高血圧腎症、精巣がん、腎細胞がん、甲状腺疾患、潰瘍性大腸炎、高コレステロール血症です。

 特に懸念されるのは子供や胎児への影響です。北海道大学の調査によると汚染地域でなくとも母親の妊娠中のPFAS濃度が高いと生まれてきた子供に出生体重の減少、甲状腺ホルモンや性ホルモンの異常、免疫力低下、神経発達の遅延、脂質代謝異常などのリスクが上昇する可能性が指摘されています」(植田さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン