ライフ

【新刊】10年のエッセイを集めた、三浦しをん『好きになってしまいました。』など4冊

他愛ない日常から温泉宿の極楽までこの10年のエッセイが大集合

他愛ない日常から温泉宿の極楽までこの10年のエッセイが大集合

 春らしい暖かな日差しが心地よくなってくるこの時期。ゆっくりと読みたい、おすすめの新刊4冊を紹介する。

『好きになってしまいました。』/三浦しをん/大和書房/1650円
胸キュンになる日々を綴る。著者の三大エンタメは「宝塚・EXILE一族・新日本プロレス」。国技館が気に入り大相撲へも。白鵬のお肌の照りと張りに目がキラリ。山形の芋煮、山羊乳入浴剤、ハンカチにも首巻きにもする手拭い。気になるのはしをんパパ(古事記学者の三浦佑之氏)のこと。年頃の娘(ン!?)の部屋に勝手に合鍵で入らないで下さいよ〜。せめてピンポンしましょ。

生につまずく女性達が出会ったカンテラのような“あなた”

生につまずく女性達が出会ったカンテラのような“あなた”

『あなたはここにいなくとも』/町田そのこ/新潮社/1705円
読書途中で気づく。カバー裏にこの短編集に寄せたエッセイがあることに(初版限定)。テーマは種蒔く人=おばあちゃん。祖母春陽(はるひ)の急逝で清陽(きよい)が解かす家族や恋人とのわだかまり、親戚だと思っていた80過ぎの藤江さんの死でリセット症候群の萌子が変える心の色、祖母直伝の栗の渋皮煮を不倫相手の妻のために作る美鈴の決心など5編。著者の憧れる「粋なおばあちゃん」選だ。

遺伝する記憶は楽譜にたとえて解説。分子生物学者の案内で知の森に遊ぶ

遺伝する記憶は楽譜にたとえて解説。分子生物学者の案内で知の森に遊ぶ

『新版 動的平衡3 チャンスは準備された心にのみ降り立つ』/福岡伸一/小学館新書/1100円
文学も好きな著者の文章は、非理系のためのたとえが愉快。例えばがん細胞は大人の正気をなくした思春期細胞で、近年正気を取り戻させる方法ができた(朗報)。また今回のコロナ禍は元々我々の一部だったウイルスが出奔、宿主を変える巡礼の旅の末「放蕩息子が私達ヒトのもとに戻って来たようなもの」と。記憶が遺伝する(DNAの働きを調節する下地を作る)のにはビックリ。

焼き菓子のいい匂いがする文庫オリジナル。 巻末にパウンドケーキ2種のレシピ付き

焼き菓子のいい匂いがする文庫オリジナル。 巻末にパウンドケーキ2種のレシピ付き

『バナナケーキの幸福 アカナナ洋菓子店のほろ苦レシピ』/山口恵以子/PHP文芸文庫/836円
母の茜(あかね)と娘の七(なな)が始めたアカナナ洋菓子店。誕生のきっかけは医院を継いだ父が突然離婚を言い出したこと。二人は母の育った下町に戻り、茜は得意なバナナケーキを挨拶代わりに近所に配る。すると喫茶店主がうちに置いてみないか、と。そんなタネが人情で育っていくスモールビジネス成長譚。母をリードする七のキャラに、エッセイなどで知る著者が重なって爽快感抜群。

文/温水ゆかり

※女性セブン2023年3月23日号

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
自民・公明・立民が成立させた年金改革法案に重大問題 「厚生年金の減額期間」をこっそり延長、法案採決に欠席した河野太郎氏は「国民の年金への信用を失う」と憤慨
自民・公明・立民が成立させた年金改革法案に重大問題 「厚生年金の減額期間」をこっそり延長、法案採決に欠席した河野太郎氏は「国民の年金への信用を失う」と憤慨
マネーポストWEB