牛乳にもホルモン剤の危険が迫る(写真/GettyImages)
いちばんの問題は、世界的な大論争を巻き起こしたラクトパミンの問題が日本ではほとんど報道されず、われわれが「食の安全」に無関心なまま黙々と有害物質の残留した牛や豚を食べていることだ。
私たちが「ザル」であることをいいことに、ホルモン剤が投与された危険な「肥育ホルモン牛肉」も日本に入ってきている。
ホルモン剤とは牛の成長を促進させる目的で使用される化学物質であり、代表的なものには女性ホルモンとして有名な『エストロゲン』がある。肥育時に投与することで成長を早めることができるとして用いられているが、乳がんの細胞を増やす原因になると指摘されており、ラクトパミンと同じく日本国内では使用が認められていない。
当然、それは世界的な傾向でありEUはアメリカ産の牛肉を成長ホルモンが入っていることを理由に禁輸している。
欧米では消費者も牛肉の安全性に敏感で、スーパーには「ホルモンフリー」と表示された牛肉が売られ、通常の牛肉よりも4割ほど割高になるにもかかわらず、需要が高まっているという。
しかし、日本はアメリカの圧力に負け、輸入肉に関しては「検査をすれば売っていい」とほぼ“素通り”に近い状態でホルモン牛肉を認可しているのが現状だ。
恐ろしいのは、アメリカ産の牛肉だけでなく、オーストラリアやニュージーランド、カナダ産の牛肉であってもホルモン剤からは逃れられないことだ。各国とも日本の検査が「ザル」であることを見抜き、「危ない牛は日本へ」を合言葉にするかのようにホルモン牛肉を次々に日本に輸出している。オーストラリアに至ってはEU向けの牛にはホルモンフリーの牛肉を輸出する一方で、日本向けにはホルモン入りの牛肉を出荷している状況だ。
ホルモン剤の弊害は乳製品にも蔓延している。
アメリカの化学メーカーが開発した『ボバインソマトトロピン』と呼ばれる、ホルスタインに注射すれば乳量が3割増えるというホルモン剤が、1998年に医学雑誌『ランセット』と『サイエンス』上で「乳がんは7倍、前立腺がんも4倍罹患リスクが上がる」という論文が発表された。アメリカではそれを受けてスターバックスやウォルマートなど大手飲食店やスーパーが「不使用」宣言をしている。
日本においても牛へ直接投与することは禁じられているが、それを使用したアメリカ産の乳製品に関してはホルモン牛肉と同様に“素通り”して入ってきているのが現状だ。