農薬が心配なじゃがいもと小麦(写真/GettyImages)

農薬が心配なじゃがいもと小麦(写真/GettyImages)

 以来、日本は同様の「規制緩和」をほかの食品にも適用させている。特に筆者が懸念しているのは「じゃがいも」と「小麦」だ。

 アメリカ産のじゃがいもには『ジャガイモシストセンチュウ』という害虫が発生しており、輸入したじゃがいもとともに日本に広まれば国産のじゃがいもにも危険が及ぶ。そうした理由で、長らく日本はアメリカからの生鮮じゃがいもの輸入を禁止していた。

 実際、1990年代まではじゃがいもの国内自給率が90%程度あったため、輸入に頼らずとも国内でまかなえることも大きな理由だった。

 しかしその後自給率は低下の一途を辿り、66%まで落ち込んだ現在、ついに「アメリカ産じゃがいも」に手を出さざるを得ない状況になってしまう。そこで2020年に日本が取った方法は、かつて農薬つきのレモンを輸入したときと同様に、害虫を駆除するための強力な農薬である『ジフェノコナゾール』を「食品添加物」と見なす、というルール変更だった。ジフェノコナゾールは動物実験により発がん性や神経毒性が指摘されており、国内ではほとんど使われていない。

 しかも日本は輸入解禁に伴い、じゃがいもにおけるジフェノコナゾールの残留基準値を20倍に緩和した。

 残留農薬が問題になっているのは小麦も同様だ。

 農林水産省が2017年に行った調査によれば、日本におけるアメリカ産の小麦の97%、カナダ産の100%から『グリホサート』と呼ばれる農薬が検出された。

 グリホサートは、発がん性の疑いが指摘されているほか、人間の体内に吸収されると、腸内細菌を殺し、さまざまな疾患を誘発することが懸念されている。

 一部ではこの懸念を否定する見解があるものの、アルゼンチンやオーストラリア、ブラジル、ベルギー、デンマーク、イギリス、オランダ、スペイン、スイスなどで規制が強化される方向にあり、アメリカにおいても今年から消費者向けの販売を停止することが決まっている。つまり世界はグリホサートにリスクがあるととらえているのだ。しかし農民連食品分析センターの調査(2019年)によれば、日本で売られている食パンのほとんどからグリホサートが検出されている。

 その半面で数少ない「国産」「十勝産」「有機」の表示があったパンからは検出されていないことも明らかになっており、海外産の小麦がいかに危険であるかがおわかりいただけるだろう。

 にもかかわらず日本はそれに逆行し、2017年に小麦はそれまでの6倍、そばは150倍にグリホサートの残留基準値を緩和した。

 残念ながら日本人の命の基準値はアメリカの意向で決められていると言わざるを得ない状況が続いているのだ。

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