消費者の行動が事態を変える
除草剤、防カビ剤、ホルモン剤などの残留、遺伝子組み換えの不安……。食料自給率が40%を割るわが国において、いま口に入るものの6割以上がそうした「危険な食べ物」であり、私たちの体は「実験台にされている」と言っても過言ではない。
頼りになるはずの検査は「ザル」であり、政治家たちは食料自給率よりも軍事費に予算を割こうとするいまの日本において、信じられるものは何もないのではないか。明日から、家族に何を食べさせればいいのだろうか。途方に暮れる読者も多いだろう。
しかし、希望を捨ててはいけない。筆者は、消費者の行動こそが事態を変えていく最も大きな力になると断言する。実際、アメリカでボバインソマトトロピンが大問題になったときも、消費者がそれを使用している乳製品を排除するような運動を始めたために、スターバックスやウォルマートは「不使用」宣言をした。
台湾でラクトパミンが大問題になったのも、市民による大規模デモが発端だった。
つまり、「政治や行政が動かなかったとしても、われわれは負けない」と自分たちで示すことが重要なのだ。
最終回はその具体的な方法や、本当に安全な食品を手に入れる方法について解説する。
(次回につづく)
【プロフィール】
鈴木宣弘(すずき・のぶひろ)さん/1958年三重県生まれ。東京大学農学部卒業後、農林水産省に15年勤務の後、農業経済学者として学界へ。九州大学大学院教授などを経て2006年より東京大学大学院農学生命科学研究科教授に。
※女性セブン2023年3月23日号