ライフ

漫画家・鳥飼茜さん 離婚を経て“世間の目”から解放され、たどり着いた「新境地」

「産みの苦しみ」について語った漫画家の鳥飼茜さん

「産みの苦しみ」について語った漫画家の鳥飼茜さん(撮影/藤岡雅樹)

 これまで『先生の白い嘘』『地獄のガールフレンド』などリアリティ溢れる男女の心理描写で人気を博し、読者の心をえぐる話題作を次々と生み出してきた漫画家・鳥飼茜さん。昨年はアラサー男性と風俗嬢の“運命の恋”を描いた『ロマンス暴風域』が渡辺大知主演でドラマ化されたことでも注目を集めた。

 そんな人気作家だが、実はこの数年、新たに取り組んだ作品と結婚生活などプライベートでの悩みが重なったことで「創作活動自体に苦しんでいた」という。今回はそんな鳥飼さんに漫画家としての「産みの苦しみ」についてインタビューした。

「小手先で漫画を描いていた」

 鳥飼さんが2019年から連載を開始した最新作が『サターンリターン』だ。「30歳になるまでに死ぬ」と学生時代に断言していた友人・中島の死をきっかけに、小説家の加治理津子は担当編集者とともに、彼の死の真相に迫っていく――というストーリー。2月に発売された単行本10巻でついに「完結」し話題を呼んでいるが、そこに至るまでの約4年間は鳥飼さんにとって作品同様、先の読めない激動の連続だったという。

 雑誌での連載が完結したのは、2022年の10月。印象的な最後のコマを描き上げた時は、走りきった疾走感よりも強い喪失感に襲われたという。

「長い連載で終わりたいけど、終わりたくないという不思議な感覚でした。完走したけど、カンパーイなんて気分にはとてもなれなくて、とにかくボンヤリとしていた。ただ、私が書いたキャラクターではありますが、主人公の“加治理津子にもう会えないんだ”という寂しさがありましたね。まぁ、それまでは悩まされ続けた存在でもあったんですが(笑)」

 漫画家という仕事の性質上“産みの苦しみ”に悩まされるのは常だが、『サターンリターン』は特に苦労が絶えなかったという。

「これは私自身の問題でもあるんですが、作品を描いている途中で自分でも“このキャラクターがどんな人間か”“何を考えているのか”がまったく分からなくなってしまったんです。死の謎を握る8人の女性を辿る――という作品の設定上、少し複雑にならざるを得なかったのもありますが、それ以上に私が悩んでしまった。

 この漫画は作中のキャラクターそれぞれが“欺瞞(ぎまん)”に満ちて嘘を隠し合っていますが、私も自分を騙しながら小手先で漫画を描いている瞬間があった。実はその頃は結婚生活などプライベートが大変な時期で担当編集とも喧嘩していましたし、酷い有様でした」

 

関連キーワード

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン