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和田秀樹氏が説く「数値を下げる薬」への懸念 「『調子がいい』と感じられるかが大事」

ベストセラー『80歳の壁』著者で精神科医の和田秀樹氏

ベストセラー『80歳の壁』著者で精神科医の和田秀樹氏

 医師から「同じお薬でいいですね」と処方された薬を漫然と飲み続けてはいないだろうか。それでは「多剤併用」からは抜け出せない。では、医師が「飲まない」と決めている薬は何か。名医の見解を聞いていく。

「多くの人が体にいいと思っていますが、実は飲まなくていい代表的な薬といえば、血圧や血糖値、コレステロール値などを“下げる”ために処方される生活習慣病の薬ではないでしょうか」

 こう語るのはベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)著者で精神科医の和田秀樹氏だ。

「血圧も血糖値も人間の活力を表わすものです。例えば低血圧の人は朝起きると強い倦怠感がありますが、血圧が高めの人はエネルギッシュです。血糖値が高いと喉が渇いたりはしますが、反対に低血糖では頭がぼんやりしてしまう。しかも、血圧などの薬は『飲んでいる人』と『飲んでいない人』の大規模比較試験すら日本では行なわれておらず、それらの薬が本当に身体にいいかどうか明確なエビデンスはないのです」(同前)

 和田医師は、検査での数値に囚われるあまり、薬を飲み続けることで「今の生活」が妨げられることを懸念する。

「私は血圧170、血糖値300と高めにコントロールしていますが、それらを基準値以下に下げるための薬は飲みません。大事なのは数値ではなく、自分が『調子がいい』と感じられるかどうか。

 数値を下げるために飲む薬は人間の元気を奪うものです。飲んでかえって調子が悪くなるなら、飲む必要はありませんよね。私の場合は、厳格な数値目標を掲げた治療よりも『今を生きる楽しみ』を優先して、好きなものを好きなだけ食べ、元気に仕事を続けられることを重視しています」

 2022年6月、日本高血圧学会などが全国のレセプトデータ(2014年)を分析して初めて明らかにした高血圧の受診患者数は約2700万人、受療者数(薬の処方を受けた人の数)は約2400万人だった。それだけ多くの国民が処方されているが、高血圧で服用するのは降圧剤だけではない。

 外科医の井上裕章医師(ヴェアリークリニック院長)は、抗血小板薬のアスピリンについてこう語る。

「『血圧が高い』というだけで、降圧剤とセットで安易に処方されがちな薬です。しかし、アスピリンはなんとなく予防目的で飲む薬ではない。心筋梗塞発症後や検査で血栓リスクが高い場合など、リスク因子がしっかり証明されている患者さんが飲むべき薬です。私は将来高血圧になっても飲むつもりはない」(井上医師)

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