作詞・作曲・編曲を手掛けるマルチ音楽コンポーザーの梶浦由記氏
――「歌手の表現力」という言葉がありますが、そういう点を指すのでしょうか。
梶浦:そう思います。歌唱力と表現力って、少し違うものだと思っています。表現力も含めて歌唱力と呼ぶ方もいらっしゃいますが、ピッチをきれいに歌えるとか、ロングトーンをきれいに伸ばせるというのと、その言葉を一つひとつ聴かせていくという能力はまったく別なものです。
言葉を聴かせていく方には強い自分の意思が必要です。自分の理解と意思、そしてこの歌をどう聴かせたいかという演出が歌う人自身にないと表現できないものなので。
その点、LiSAさんは歌に対する欲が深いというか、自分の作戦とか、意識みたいなものがとても高くて。
――音符を表現するということと詞を表現するということ。その二つが歌手の方に必要だということですね。
梶浦:そうですね。私はご一緒する機会はさほど多くないのですが、最近、よく声優さんが歌いますよね。声優さんは滑舌がすごくいいので、言葉がきれいに聴こえるんですよ。なので、ハッとするような歌になったりするんです。
【プロフィール】
梶浦由記(かじうら・ゆき)/作詞・作曲・編曲を手掛けるマルチ音楽コンポーザー。1993年「See-Saw」のコンポーザー兼キーボーディストとしてデビュー。現在はアニメを中心とした劇伴音楽を手掛け、「ソードアート・オンライン」、「魔法少女まどか☆マギカ」、「鬼滅の刃」等、数々の話題作を担当。
【聞き手・文】
春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2023年3月31日号
