格下との取組ばかりで2ケタ勝利の“価値”とは
大関・貴景勝が来場所はカド番の土俵となる。陥落すれば大関が空位という危機的な事態になるが、ここにきてむしろ“大関候補”だらけのような状況が生まれている。
興行的にも看板力士たる横綱や大関がいなければ成立しないという事情もあるのだろう。1月場所は4関脇4小結、3月場所は3関脇4小結という番付編成になり、そのうちの誰かに“3場所・三役で33勝”という大関昇進の目安をクリアしてほしいという願いが透けて見えるような状態だったが、その“効果”が出ていると言えそうだ。ベテラン記者が言う。
「もはや協会は大関昇進の目安とされる“3場所・三役で33勝”にこだわっていないようにさえ見えます。もちろん、目安として直近3場所の安定した成績は条件となるが、ハードルはかなり下がるのではないか。霧馬山は1月場所が小結で11勝、3月場所が12勝で初優勝ということで、5月場所で10勝を挙げれば大関に当確でしょう。他にも優勝同点だった大栄翔は1月場所が西前頭筆頭で10勝、3月場所は東張出小結で12勝ですからね。“三役で”という条件からは外れるが、対戦相手が三役とほぼ同じ前頭筆頭。最近でも照ノ富士(2015年)と栃ノ心(2018年)は3場所前の番付は平幕上位だった。来場所の成績次第ではダブル昇進の可能性もある。
大関に最も近いとされた若隆景は7勝7敗1休で出直しとなるが、西小結で11勝を挙げた兄の若元春は1月場所に西張出小結で9勝を挙げており、『2場所で20勝』まできている。来場所の成績次第では昇進の可能性は残されているでしょう。(叔父である元横綱の)朝青龍からプレッシャーをかけられているといわれる豊昇龍も4場所連続で関脇の地位を守っており、1月場所は西関脇で8勝、3月場所は同じく西関脇で10勝です。5月場所で高いレベルの優勝といった成績なら大関候補のひとりとなる」
その時々の出場力士たちが対戦して成績が出るので当然とはいえ、過去に大関に昇進した力士たちとは状況が大きく異なるのは事実だろう。
「平常時であれば、時の横綱や大関との取組も含めての“3場所33勝”が目安とされてきた。しかし、今場所は大関・貴景勝が前半で休場したことで、関脇・小結陣は格下の力士との対戦ばかりになった。7人の関脇・小結のうち4人が2ケタの成績を残しているが、下位に取りこぼしも目立った。霧馬山の優勝も14日目の若隆景との不戦勝が大きかったのは間違いないでしょう」(同前)
来場所も1横綱・1大関で、関脇4人、小結3人の変則番付が予想されている。“大関候補”のなかから、文句なしの内容・成績で昇進を決める力士に出てきてほしいものだ。