国内

ベストセラー作家・橘玲「年収1千万円、大学准教授でも結婚できない」出会いに不自由しないSNS時代の「不都合な真実」

ノンフィクションライターの宇都宮直子さん

ノンフィクションライターの宇都宮直子さん

 日本を取り巻く分断の正体や、自由で平等な社会がかえって不自由さを生む皮肉さを脳科学や進化論、遺伝学をもって読み解くベストセラー作家の橘玲さん。新刊『シンプルで合理的な人生設計』も話題の彼が、最近関心を持っているのがホストクラブにハマり、その沼から抜けられない女性客たちの存在。通称「ホス狂い」と呼ばれる彼女たちを追い続けるノンフィクションライターの宇都宮直子さんと緊急対談を行った。

 アプローチの違いこそあれ、互いに日本社会の「不都合な真実」に迫るふたりが、頻発する事件の読み解き方からシニア婚活の最新事情まで、日本を取り巻くシビアすぎる現実について語り合った。その第3回をお送りする(全3回)。

* * *

宇都宮:いま話題の「推し活」ですが、ここ数年で急に市民権を得たように感じます。少なくとも私が学生だった25年ほど前を振り返っても、バンドの「追っかけ」を名乗る女の子はいたけれど、いまのようにメジャーじゃなくて、もっとアンダーグラウンドな印象というか、こんなに表立って言えるような空気じゃなかったと思うんですよね。

橘:確かにこれまでなかったムーブメントですよね。

宇都宮:しかも驚くのは、事件の取材をしていると、たまにですがその犯人の「推し」を名乗るような子がいたりするんですよ。身内でも、元々の知り合いでもないのに甲斐甲斐しく差し入れをしたりして……。こういう風潮って背景に何があるんですかね?

橘:昔も凶悪犯に女性のファンがつくということはありましたが、それが「推し活」にまでなるのは、ひとつの理由として、恋愛が難しくなったからだと思います。1980年代は、『ホットドッグプレス』や『ポパイ』のような男性向け雑誌で「どうやって女の子を口説くか」という特集を盛んにやっていて、恋愛はまだ攻略可能でした。

宇都宮:逆に女の子はどうやって素敵な男性からモテるかを研究するっていう時代でしたね。だけどいまって、マッチングアプリとかもありますし、SNSでもつながれて、出会いには不自由しない感じがありますけれど……。

橘:その「出会えてしまう」というのが問題で、以前は恋人を作ろうとすると、たいていは学校か会社で探すしかなかった。人間関係が限定されているうえに、その中で男も女も暗黙のカーストが決まっていて、釣り合う者同士が付き合っていく。他に選択肢がないからこそ、たまたま近くにいた相手と赤い糸で結ばれていると錯覚して盛り上がれる。

宇都宮:昔と違って「自由化」すると出会いがあるがゆえに、恋人選びを吟味したり、人気者に一極集中したり……という構図が生まれるということですか?

橘:恋愛の自由市場では、狭い人間関係から解き放たれるわけですから、必然的に、人気者に一極集中していくことになりますよね。それも男女の生物学的な性差から、恋愛の第一段階では、女が「選ぶ側」、男が「選ばれる側」になります。それが顕著なのは婚活市場です。

宇都宮:よく女性は年齢以外、特に基準はないけれど、男性は「年収1千万円以上」とか「東大卒限定」みたいな婚活パーティーがあるって聞きます。けっこうすごい世界ですよね。

橘:そういう場では、「エロス資本」しか持たない地方出身の高卒の女の子が医者とか弁護士と簡単に出会えてしまう。そういう「自由な婚活市場」がいかに男性にとって困難かを描いた『婚活戦略』(中央経済社)という本があって、著者の高橋勅徳さんは大学で経営学を教える准教授で48歳、年収1千万円はある人なんですが。

宇都宮:結構なハイスペック!それでも苦労するんですか?

橘:はい、そのレベルでも全く女性に相手にされない。なぜなら、ライバルもみんな「年収1千万円超え」だから。高収入の男限定の婚活パーティでは、女性たちの関心はハイスペック男性に分散するのではなく、その中でもっともイケメンで若い男に集中するんです。それでも高橋さんは、なんとか32歳の事務職の女性と付き合えるようになって、彼女の趣味に合わせてデートをしたり、ご飯を食べに行ったりして、「沖縄旅行に行こう」という話が出る。

関連記事

トピックス

マムカ司令官
【ウクライナの戦場取材でYOASOBI】報道カメラマンがウクライナで戦うジョージア部隊「世界初の最前線取材」の許可を得るまで ドーベルマンとフィアット500に乗り、車内で『夜に駆ける』
NEWSポストセブン
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《交通事故で骨折と顔の左側の歯が挫滅》重傷負ったタレントの大東めぐみ「レギュラーやCM失い仕事ほぼゼロに」後遺症で15年間運転できず
NEWSポストセブン
ポータブルトイレの大切さを発信するYoutuber・わさびちゃん
「そもそもトイレの話がタブー過ぎる」Youtuberわさびちゃんが「トイレ動画」を公開しまくるようになったきっかけ「芸人で恥ずかしいこともないし、夫に提案」
NEWSポストセブン
1990年代、多くの人気バラエティ番組で活躍していたタレント・大東めぐみさん
《事務所が猛反対もプロ野球選手と電撃結婚》元バラドルの大東めぐみ、人気絶頂で東京から大阪へ移住した理由「『最近はテレビに出ないね』とよく言われるのですが…全然平気」
NEWSポストセブン
全国で車中泊をしているわさびちゃん夫婦。夫は元お笑い芸人のピーチキス・けん。
YouTuber・わさびちゃんが「トイレ動画」でバズるまでの紆余曲折「芸人時代に“女”を求められたり、男性芸人から嫉妬されたり…」
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《借金で10年間消息不明の息子も》ビッグダディが明かす“4男5女と三つ子”の子供たちの現在「メイドカフェ店員」「コンビニ店長」「3児の母」番組終了から12年
NEWSポストセブン
リシェット
戦場取材に欠かせない「フィクサー」とは? ウクライナ入りした報道カメラマンが紹介された“取材に愛犬を連れて来る男” ギャラは「1日1500ドル」と法外な金額に
NEWSポストセブン
女児盗撮の疑いで逮捕の小瀬村史也容疑者(37)。新たに”わいせつ行為”の余罪が明らかになった
「よくタブレットで子どもを撮っていた」不同意わいせつ行為で再逮捕の小瀬村史也容疑者が“盗撮し放題だったワケ” 保護者は「『(被害者は)わからない』の一点張りで…」
NEWSポストセブン
成年式を控える悠仁さまと第1子を出産したばかりの眞子さん(写真・右/JMPA)
眞子さん、悠仁さまの成年式を欠席か いまなお秋篠宮家との断絶は根深く、連絡を取るのは佳子さまのみ “晴れの日に水を差す事態”への懸念も
女性セブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《多産DVを語ったビッグダディ》「子どもができたら勝手に堕ろすんじゃないぞ」4男6女の父として子供たちに厳しく言い聞かせた理由
NEWSポストセブン
ボニー・ブルーとの2ショット(インスタグラムより)
《タダで行為できます》金髪インフルエンサー(26)と関係を持った18歳青年「僕は楽しんだから、被害者になったわけじゃない」 “捕食者”との批判殺到に反論
NEWSポストセブン