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脱毛サロン倒産急増、予約トラブルなど影響 帝国データバンク

脱毛サロンの倒産が急増した。出典/帝国データバンク

脱毛サロンの倒産が急増した。出典/帝国データバンク

※本記事は、ヒフコNEWSからの転載記事です。

 2022年度、予約トラブルなどの問題で、医療行為を伴わないエステ脱毛を専門とした「脱毛サロン」7社が倒産し、2000年以降で最多になったことが明らかになった。小規模店舗も含めるとさらに多くの脱毛サロンが淘汰された可能性もある。店舗増加や利用者急増などで運営に無理が生じ一部の運営が破たんしたことが背景にある。一般の被害者も多数出ており、既に脱毛を受けている人、検討している人には人ごとではない状況と言えるだろう。帝国データバンクが4月10日に公開した倒産集計2022年度報で報告している。

脱毛業界3つの変化と生まれたひずみ

 脱毛業界の動向を振り返ると大きく3つの変化があったようだ。一つは店舗が増えていたことだ。その背景には低価格の機器が導入できるようになるなど参入障壁が下がっていたことがある。しかし施術そのものの差別化が難しいなどで、「月額1万円以下」「通い放題」など低価格競争が激化していた。さらに著名人を起用した広告で集客を図るなど宣伝広告の支出も増大していた。

 一方で、もう一つの変化は、女性ばかりではなく男性も脱毛を利用するようになったことだ。もともと脱毛は女性の利用が多かったが、男性専用の脱毛サロンが登場するなど、男性利用者が増えていた。さらなる変化は、コロナ流行なども影響したSNSの活況により美容意識が大きく変化したことだ。ヒフコNEWSでも、SNSで韓国の美容トレンドが世界に影響した状況について伝えたが、そうした影響は脱毛業界にも波及した。

 このような店舗の急拡大や利用者急増の陰でひずみも生じていた。帝国データバンクによると、一部の店舗ではスタッフ確保が追いつかず、予約が取れないトラブルが起きていた。結果、利用者の信頼を失い、解約を招く事態に陥り、新規会員獲得も難しく、施術費用の低価格、固定費や宣伝広告費の増加も相まって利益が圧迫され、経営が行き詰まるところも出ていた。

突然の店舗閉鎖などの被害を防ぐには?

 2022年8月には、帝国データバンクが経営破綻した「全身脱毛革命サロン・脱毛ラボ」についてレポートを発表したが、「連射脱毛マシンの導入で施術時間が半分」「最短2週間に1回通える」など、予約の取りやすさをアピールし、2022年6月までに全国47店舗を展開し、シンガポールやタイにも出店していた。しかし、コロナの影響もあり休業や営業時間短縮を余儀なくされ、新規契約者も伸び悩み、親会社の変更も経て、最終的には事業停止へと追い込まれた。この倒産により3万人もの一般の人たちが影響を受けたという。利用者は施術が不可能になった上に返金も受けられない可能性がある。

 帝国データバンクでは、大規模な倒産だけではなく、水面下ではさらに小規模店舗も含めより多くの脱毛サロンが淘汰された可能性を指摘する。国民生活センターへの脱毛サロン契約に関する相談件数は2022年度には2月時点で1万6921件に上り、2016年度~2021年度には2500~5000件で推移していた状況が一変した。「安さを強調した顧客の目を引くための広告や、提供サービスの質など、利用者保護に立った脱毛サロンのありかたが問われている」と帝国データバンク。こうした被害を予防するにはどうすればよいか。その一つの鍵は、脱毛サロンを選ぶ際にあらかじめ予約状況など事前に情報を確認することはあるだろう。突然の倒産のような被害を防ぐ上では、そうした対策は「転ばぬ先の杖」になり得る。

参考文献
倒産集計 2022年度報(2022年4月1日~2023年3月31日)(帝国データバンク)
https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/22nendo.html

コロナ・パンデミックが世界の美容を変えた、その背景に韓国美容のトレンド(ヒフコNEWS)
https://biyouhifuko.com/news/world/147/

倒産速報記事 株式会社セドナエンタープライズ(帝国データバンク)
https://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4914.html

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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