学園ドラマの枠を超えた話題のドラマ『ちはやふる―めぐり―』(公式HPより)
夏ドラマの傾向に最近、変化が見られるという。学園ドラマばかりが放送された時代があったが、今はその学園ドラマや子供を題材にしたドラマがさま変わりしているというのだ。その背景について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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かつて7月から9月に放送される「夏ドラマの華は学園ドラマ」と言われた時代がありました。その理由は子どもたちが夏休みの時期で視聴しやすく、多くの作品が放送されたから。
これまで小・中・高校が舞台の夏ドラマが放送されましたが、1980年代以降の主な作品をあげていくと……
田村正和さん主演『うちの子にかぎって…』(TBS系)、斉藤由貴さん主演『はいすくーる落書』(TBS系)、浅野温子さん主演『職員室』(TBS系)、反町隆史さん主演『GTO』(関西テレビ・フジテレビ系)、山田孝之さん主演『WATER BOYS』(フジテレビ系)、市原隼人さん主演『WATER BOYS2』(フジテレビ系)、天海祐希さん主演『女王の教室』(日本テレビ系)。
鈴木杏さん主演『がんばっていきまっしょい』(関西テレビ・フジテレビ系)、阿部寛さん主演『ドラゴン桜』(TBS系)、長瀬智也さん主演『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系)、榮倉奈々さん主演『ダンドリ。~Dance☆Drill~』(フジテレビ系)、堀北真希さん主演『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)。
織田裕二さん主演『太陽と海の教室』(フジテレビ系)、榮倉奈々さん主演『黒の女教師』(TBS系)、芳根京子さん主演『表参道高校合唱部!』(TBS系)、寺尾聰さん主演『仰げば尊し』(TBS系)、土屋太鳳さん主演『チア☆ダン』(TBS系)。
2010年代に入ったあたりから視聴率が取れなくなり、後半には明らかにその数は減っていたものの、2020年代に入ってからも松岡茉優さん主演『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)、山田涼介さん主演『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)、生田絵梨花さん主演『素晴らしき哉、先生!』(ABC・テレビ朝日系)が放送されました。
では今夏はどうなのか。単なる学園ドラマではなく、“子ども”をフィーチャーした興味深いアプローチの変化が見られます。
学園ドラマの枠を超えたプロジェクト
まず「王道の学園ドラマ」と言えるのが『ちはやふる―めぐり―』(日本テレビ系、水曜22時)。同作は競技かるたに青春をかけた高校生たちの物語であり、主演を18歳の當真あみさんが務めるなど、随所にフレッシュなムードが漂っています。
特筆すべきは2016年、2018年に3部作として公開された映画から10年後の世界を描いたドラマであること。漫画原作者の末次由紀さんの協力を得たほか、映画の監督・脚本を手がけた小泉徳宏さんが現場指揮を執るショーランナーを担い、映画の主要キャストである広瀬すずさんや上白石萌音さんも出演するなど、学園ドラマの枠を超えたスキのない大型プロジェクトです。
次に『僕達はまだその星の校則を知らない』(関西テレビ・フジテレビ系、月曜22時)はスクールロイヤーの弁護士が主人公の学園ドラマ。序盤から「制服裁判」「失恋はいじめか?」というテーマを掲げ、法律の観点を絡めて高校生の姿を描くという時代に合わせた試みが見られます。
さらに興味深いのが『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系、月曜21時)。こちらは学校ではなく児童相談所が舞台の物語であり、さまざまな問題を抱える子どもたちの姿が描かれています。同作の主人公は新人児童福祉司ですが、実質的な主役は各話でフィーチャーされる子どもたち。実際、放送後は子役たちの演技を称える声がネット上に見られます。
その他でも『愛の、がっこう。』(フジテレビ系、木曜22時)は、まじめすぎる高校教師と文字の読み書きが苦手なホストのラブストーリーですが、第1話で高校生がホストクラブにはまってしまうシーンがあったほか、しばしば教室のシーンが盛り込まれるなど、夏ドラマのムードを感じさせられます。
ヒット映画を絡めた大型プロジェクトの学園ドラマ、スクールロイヤーの目線を通した学園ドラマ、児童相談所を舞台に選んで子どもにスポットを当てたドラマ……なぜ夏ドラマにおける子どもたちの描き方に変化が見られるのでしょうか。