ピッチコムの導入も?
高校野球ではサイン盗みのほかに、外部からベンチの指導者にメモなどを渡す「伝書鳩行為」を禁止している。だが、捕手出身のある指導者は、新手の伝書鳩行為が存在する疑いを指摘した。
「それはアップルウォッチをはじめ、スマートウォッチを使った情報の伝達です。相手投手の癖や配球の傾向を、バックネット裏にいるチーム関係者から送ってもらうという話は耳にします。そうした行為がいつか問題になると思って、普段はアップルウォッチを使っているのに、試合中だけはG-SHOCKに付け替えて疑われないように予防線を張っている監督もいます。地方の球場の試合では、甲子園とは違い、ベンチの裏を関係者が行き来できて、やろうと思えばいくらでも情報のやりとりができる。ベンチではさすがに使用できなくても、トイレの個室に携帯電話を持ち込んで、連絡をとることだって可能です。結局、サイン盗みや伝書鳩行為は、モラルの問題かもしれない」
2020年には広島・如水館の監督とコーチが、LINEを使って相手選手の特徴などを携帯電話で送受信していたことが発覚。県の高野連から厳重注意を受けたこともがあった。携帯電話をはじめ、通信機器のベンチへの持ち込みは禁止されているものの、スマートウォッチに対する監視の目はないのが実状だ。
「今後、高野連はスマートウォッチに関する取り締まりを考えるべきと思います」(同前)
日本のプロ野球では2021年、東京ヤクルトの村上宗隆が三塁の守備中、二塁走者だった阪神選手のサイン盗みを疑い、両ベンチから罵声が飛び交い、神宮球場が騒然となったことがあった。だが近年、サイン盗みが俎上に載るケースとしては高校野球の方が圧倒的に多いだろう。
メジャーリーグでは2017年のワールドシリーズでサイン盗みが行われていたことを受けて、昨年から捕手と投手の間で球種とコースを伝達するための電子機器「PitchCom(ピッチコム)」が導入された。
このまま高校野球にサイン盗みがなくならないのであれば、ピッチコムの導入をも検討する日が訪れるかもしれない。
【了。前編から読む】