菊五郎は“実力がある役者が菊五郎を襲名してくれればいい”と公言しているという(時事通信フォト)
2人を知る歌舞伎関係者は「音三郎さんが不憫でならない」と、こう語る。
「若い頃は温厚で控えめな印象だった菊之助さんが変わったのは、父・菊五郎さんが体調を崩しがちになった6、7年前からでしょうか。自分が一門の中心として采配を振るい、テレビなどでも注目され始めてから、高圧的な物言いが増えるようになりました。特に最近は、“そんなささいなことで”と周囲が思うようなことでも、出演者やスタッフを怒鳴り散らす光景がよく見られました。
一門を支えてきた音三郎さんは、自分のプライドというよりも、一門のリーダーとしての菊之助さんの人間性に疑問を持ち、いてもたってもいられなかったのでしょう」
菊之助の一門は、由緒正しき「音羽屋」の屋号を誇る。当然、名門の看板を守っていかなければならないプレッシャーがあったのだろう。加えて、菊之助が2013年に結婚した妻・瓔子さん(40才)の父は、2021年に77才でこの世を去った中村吉右衛門さんだ。
「菊五郎さんも吉右衛門さんも、重要無形文化財の保持者、『人間国宝』です。つまり、丑之助くんは、父方・母方どちらの祖父も人間国宝ということになります。2019年に襲名して初舞台を踏んだ丑之助くんは、偉大な両祖父と共演しています。
丑之助くんには、音羽屋としてはもちろん、吉右衛門さんの屋号である播磨屋としての期待もかかっている。その分、半端な役者にしてはいけないという菊之助さんの重圧は大きく、丑之助くんのことになるとナーバスになるのでしょう」(別の歌舞伎関係者)
焦りの理由は、菊之助の実姉・寺島しのぶ(50才)も関係しているようだ。寺島の長男・眞秀(10才)は、「初代・尾上眞秀」として、この5月の『團菊祭五月大歌舞伎』で初舞台を踏む。寺島の知名度と、梨園には珍しく、フランス人の父を持つこともあって宣伝効果は抜群だ。
「初舞台の記者発表は、在日フランス大使公邸で行われるなど異例づくし。立役は菊五郎さんが、女形の指導は坂東玉三郎さん(73才)という2人の人間国宝が直々に英才教育を施しています」(前出・歌舞伎関係者)