バラエティIQが高いキャプテン佐々木久美
企画を立てる際は、お笑い番組とアイドル番組の違いを意識したりするのだろうか。
「あまり意識はしないですけど、下品になりすぎないというのは考えます。あとは、メンバーのキャラが出て生きればいいなと思います。みんなよく『キャラが迷走』とか言うんですけど、やっぱり作ったキャラって結局続かないから、なるべく素を出してほしいと思いながらやっています。
僕が他人の揚げ足をとって生きてきたんで(笑)、どうしてもオードリーさんを使ってイジりながらメンバーの素を引き出していくという方向になりがちですね。だから、キャプテン(佐々木久美さん)なんかは、頭がいいからどういう展開を望んでいるかわかって上手に対応してくれます。若林さんにもうまく対応していただけます。編集では基本、面白いか面白くないかで判断してカットしちゃってます」
メンバー発信の企画が採用されることが多いのも番組の特長だ。
「こっちが与えた企画よりも、本人に熱があるんで、成功しようが、失敗しようが、番組が転がっていく。だからアンケートの片隅にちょっと書いてあるのをできるだけ拾っていって展開させていったほうがいい場合が多いです。
たとえば、キャプテンが今やりたいことは『休みたい』って書いてあったから、じゃあ『久美を休ませよう』っていって隣の部屋で休んでいるテイにして、別の場所で色々言うような空間を作っちゃうとか(笑)。まあこれも揚げ足取りみたいなことですね。アンケートに書いてあったじゃんって(笑)」
日向坂46メンバーの“バラエティ力”はなぜ高いのか?
この番組で驚くのは、日向坂46のメンバーのバラエティへの対応力だ。オードリーは、彼女たちには時代的に絶対にわからないであろう『キン肉マン』などの喩えを頻繁に繰り出す。当然、最初はポカンとしていた彼女たちだが、やがて勉強し、それを理解するだけでなく、自分たちからも『キン肉マン』ボケをするようになった。自発的にどんどん前に出てボケていく。何より、それをやらされている感じではなく、ひたすら楽しそうにやっているのがいい。
「すべてはやる気ですよね。前向きにがんばろうって思ってくれるメンバーが多いからありがたい。そもそも自分の出番がなくて泣くって、僕らも含めて見習わないと(笑)。オードリーさんのことを好きになって信頼しているっていうのも大きい。でも、全員が全員同じ方向を向いてくれていなくてもいいと思うんですよ。齊藤京子さんみたいに企画に対して『嫌だ』って言ってくれる人がいたほうが面白い」
定期的に放送される未公開集を「カット女王」と題し「カットが多いのは番組に対して前向きに挑戦した証」として称えるところに「失敗してもいい」という番組の真髄が現れている。
「普通に総集編にするのが嫌だったんです。それで、やっぱりそれだけ挑戦しないと番組は盛り上がっていかないし、相乗効果も生まれないからそういう目線でまとめました。だからどんどん来てくれるのはありがたいですね。全部、若林さんが拾って笑いにしてくれるし、スベったとしても春日さんもフォローしてくれますから。やっぱりすべてはやる気ですね」
(後編に続く)
【プロフィール】関谷司(せきや・つかさ)/『日向坂で会いましょう』(テレビ東京)ディレクター。1999年にケイマックス入社後、『「ぷ」っすま』、『内村プロデュース』(ともにテレビ朝日系列)でアシスタントディレクターを務め、のちに配信番組『内村さまぁ~ず』のディレクターを務めた。
◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。