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八冠も視野に入る藤井聡太六冠 そこに立ちはだかるのは「将棋連盟新会長」羽生善治九段

藤井聡太六冠(左)と羽生善治九段が再び対戦?(時事通信フォト)

藤井聡太六冠(左)と羽生善治九段が再び対戦?(時事通信フォト)

 20歳の天才棋士、藤井聡太六冠(竜王、王位、叡王、棋王、王将、棋聖)の勢いが止まらない。七冠目の奪取を目指して渡辺明名人(39)に挑戦する名人戦7番勝負では開幕から2連勝。史上最年少名人にまた一歩近づいた。このまま史上初となる八冠制覇に突き進むのか、あるいは誰かがストップをかけるのか──。

 名人位の他に藤井竜王がこれから獲得を目指すタイトルは「王座」だ。タイトルを懸けた5番勝負は例年9月はじめに開幕する。藤井竜王は永瀬拓矢王座(30)への挑戦権を16人で争う挑戦者決定トーナメントへの出場が決まっている。5月10日の1回戦は中川大輔八段(54)との対戦となる。将棋ライターの松本博文氏はこう言う。

「開幕から2連勝した名人戦は奪取が“射程圏内”に入ってきたと言えるのではないでしょうか。渡辺名人との通算対戦成績は18勝3敗と大きく勝ち越す結果になっており、このまま藤井六冠が押し切るのではないかと見る人は多い。渡辺名人のツイートによれば対局中、まだ勝負どころが残されていたのに、気が付かなかったそうです。もしかしたら、精神的にも追い込まれているのかもしれません。

 将棋はもちろん技術が第一のゲームですが、ときにメンタルのありようが勝負の行方を大きく左右します。大きく負けが込んでいる強敵相手に精神的にも圧倒され、肝心な局面で力を発揮できずに折れてしまう。そうした現象は、この世界ではしばしば起こります。

 では藤井六冠の八冠制覇がもはや確定的かといえば、そんなに簡単なわけではありません。藤井六冠の勝率は驚異的ですが、それでももちろん10割勝っているわけではない。王座への挑戦にはトーナメントでの4連勝が必要。これまで王座戦に5期参加して挑戦権を獲得したことはないわけですから、今期もまた敗退してしまっても、なんら不思議ではありません」

 八冠を制覇すれば史上初の偉業だが、将棋界のタイトルがまだ7つだった当時、それを独占した経験を持つのが羽生善治九段(52)だ。その羽生九段は、今年の王将戦で藤井六冠に挑戦し、タイトル戦での初対決が実現した。32歳差の対決は熱戦続きの末に藤井六冠が4勝2敗で防衛を果たしているが、羽生九段はその後も好調を維持している。

「羽生九段は王座戦でも挑戦者決定トーナメントに駒を進めており、羽生・藤井がともに勝ち上がっていけば、両者は準決勝で対戦することになります。羽生九段は王座通算24期という、史上1位のとてつもない記録を持っています。さすがの藤井六冠でも更新は容易でない、アンタッチャブルレコードのひとつです。それほどまでに相性のいい王座戦で、羽生九段が藤井六冠にとっての“壁”になることは十分にあり得ます。

 また、藤井六冠がタイトルを保持する王位戦では、紅白両組に分かれた挑戦権決定リーグが進行中ですが、紅組では羽生九段と豊島将之九段が3勝1敗で並んでいます。最終戦で両者は直接対決し、勝ったほうが優勝。羽生九段はそこで勝ち、さらに挑戦者決定戦で白組優勝者に勝てば、久々に王位挑戦権を獲得できます。藤井六冠からタイトルを奪うのは大変なことですが、7番勝負において第4局終了時点で2勝2敗に持ち込んだのはこれまで羽生九段だけ。

 その他に羽生九段は、藤井六冠がタイトルを保持する竜王戦でも決勝トーナメント出場を決めています。1組準決勝では、藤井六冠と渡辺名人に次ぐ序列ナンバー3の永瀬拓矢王座に完勝を収めていました。羽生九段がタイトル戦で藤井六冠に勝つ可能性はもちろんあります。タイトル通算100期を願うファンは多く、そうした声援は羽生九段にとって、大きな後押しとなるでしょう」(松本氏)

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