ライフ

“タバコ病”と呼ばれる「COPD」 看過され進行すると肺炎など重篤な合併率が高まる

国内に700万人以上の患者がいると推計されているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。イラスト/いかわやすとし

国内に700万人以上の患者がいると推計されているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。イラスト/いかわやすとし

【週刊ポスト連載・医心伝身】COPD(慢性閉塞性肺疾患)は肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれてきた病気の総称で、国内に700万人以上の患者がいると推計されている。肺の広い範囲で気管支の炎症や肺胞の破壊が進行し、咳や痰、息切れが強くなる。40歳代から発症し始め、高齢になるほど患者が増加。またCOPDは肺炎や肺がん、心疾患を合併することが多く、それらによる死亡リスクも高くなる。

 肺の機能は25歳頃をピークに、徐々に低下する。肺の容積は成人で左右合わせてバケツの容積に近い約5リットルだが、1分間に12回呼吸をしたとして、1回につき500ミリリットルずつ入れ替わる。つまり、肺は呼吸の際に容量の10分の1程度しか使わない余力のある臓器といえる。そのため気管支に炎症が起きたり、肺胞が障害されても本人は気づきにくい上に、仮に息切れしても「運動不足だから」とか何らかの理由をつけ、肺に障害があるとは深く考えない。

 呼吸ケアクリニック東京(東京都中央区)の木田厚瑞理事長に話を聞いた。

「COPDはタバコ病と呼ばれますが、本人の喫煙習慣が原因と考えられるのは30%以下で、他の原因が大きいのです。例えば家族に肺がんや喘息の方がいる家族性の患者さんや母親がヘビースモーカーで、結果的に低体重児として肺の発達が悪く生まれてくる場合もあります。さらに粉塵大気汚染も発症に大きく影響します」

 日本では40歳以上の約10%がCOPDといわれ、加齢に伴い増加する。新型コロナ感染拡大前のCOPDによる死者数は世界全体で3位だったが、2020年に日本で判明した死者数が約1万6000人と少なかったのは、合併症での死亡数が含まれていないからだと推測されている。

 前述したように、COPDは本人が気づきにくいので、結局は風邪を引いた後などに咳や痰、息切れがひどくなり、増悪という一時的な悪化症状によって病院を受診するケースが多い。病院では喘息や急性気管支炎と区別するだけでなく、進行度合いも確認するために多角的な検査が行なわれる。問診、肺機能検査、CTでの画像診断、6分間の歩行検査などを実施、総合的に判断し、息切れに関しては心臓病が原因で起こることもあり、場合によっては心臓超音波検査なども併用される。

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段通りの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
《名誉毀損で異例逮捕》NHK党・立花孝志容疑者は「NHKをぶっ壊す」で政界進出後、なぜ“デマゴーグ”となったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん
「今この瞬間を感じる」──PTSDを乗り越えた渡邊渚さんが綴る「ひたむきに刺し子」の効果
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン