「私はガーシーに会ったこともないんですから、うまいことなんて言えませんよ」と語る武田鉄矢さん
だから、私はいろいろな番組に出て、東野幸治さんや「くりぃむしちゅー」の上田晋也さんや有田哲平さん、明石家さんまさん、松本人志さんに、やっつけられにいくんです。
実は私自身も若い頃、大ベテランの俳優さんを泣かせちゃったことがあるんです。映画を撮影中、その方が監督に「このセリフはどう言ったらいいですか」と熱心に伺っていたので、私は「こうやったらいいんじゃないですか!」って、つい横から口出ししてしまったんです。そうしたら、その方は「あんな若い人に教えられるなんて」と泣いてしまった。若気の至りでしたね。
それに、『3年B組金八先生』を長年やって、ずっといい思いをしてきました。私はいい人の役ですが、周りは融通の利かない校長、機嫌ばかりとっている教頭、金八の悪口を言い続ける教育委員会の人とか、悪役ばっかりです。その役をすごい名優たちが演じてくれていたから、金八先生は引き立ったんです。だから、私の残りの役者人生は、悪い役回りを演じないと申し訳ない。それが芸能界のバランスだ、と思っています。
「人間って多面的」
実際に悪役を演じることが増えてきましたが、この世は良いことと悪いことに、単純に分けられないことも多いですよ。正解はひとつじゃない。たとえば、不倫もそうです。倫理に反しているとかいないとかでジャッジする問題じゃないんじゃないでしょうか。こんなこと言うと怒られるかもしれませんけど、男という生き物だったら、欲に負けちゃうことってありますよね。今はメディアが正義を決め、答えをひとつに絞ろうとしていますが、人間って多面的だからひとつの答えにすることはできないでしょう。ただ私、個人としては、不倫をして迷惑をかけた人がいるなら、その人の作品をテレビで見る気はしませんね。
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後編では、武田さんが「ネットで叩かれたときの向き合い方」や、「松本人志さんに重ねた島田紳助さんの才能」について語っている。
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫