フードスタイリストがドラマを観る「視点」
岡本さん:感想は2人がほぼ言ってくれましたけど、個人的にはフードスタイリストとして初めてのことがありました。『かしましめし』はすでに原作漫画で料理もレシピも描かれています。そこまで緻密にイメージが決まっているものを再現するのは初めてで、それが楽しく感じられました。
ふだんは自分が作らない料理もたくさん出てきました。チュクミサムギョプサル。韓国料理はなかなか生活圏にはないですから。
──フードスタイリストという職業柄、自身が関わっていない他の作品や画面に出てくる料理はやはり気になりますか?
3人:なります!
板井さん:「何回くらいリテイクを重ねて完成しているのかな」と想像したり。まだ飯島ほどの経験値はないですけど、この料理を自分が作ったらどうなるんだろうとか、想像しながら観たりします。
岡本さん:湯気(がどれだけ出ているか)は気になります。
板井さん:それは私もです。
飯島さん:私は出演者の人数に対して、テーブルのサイズが合っていないとか……つい、見てしまうんです。
あとは朝ごはんなのにエビチリがあるとか、不自然なメニューだったりするともう気になっちゃう。反対に、本当に自然でふつうの料理なのに、美味しそうに見える料理も気になります。どんな人が作ったのかなって。職業病みたいなものです。
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料理が好きという気持ちが高じて、フードスタイリストの職業を選んだという3人。彼女たちの手先からあふれる愛情によって作られる料理が、作品を彩り、視聴者の食欲をつついていく。改めてドラマ『かしましめし』を観る視点を変えて観たくなった。そこには想像していなかったナラティブが潜んでるはず。【後編へ続く】
【プロフィール】
飯島奈美(いいじま・なみ)/フードスタイリストとして1998年より独立。映画、ドラマ、CMに登場する料理を手掛けるほか、食に関わるプロデュースも。参加作に映画『かもめ食堂』(2005年)『南極料理人』(2009年)『海街diary』(2015年)『すばらしき世界』(2021年)、ドラマ『深夜食堂』(TBS系列・2009年)『ごちそうさん』(NHK総合・2013年)『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ、フジテレビ系列・2021年)など。レシピに関する著作も多数
板井うみ(いたい・うみ)/フードスタイリスト。2007年より飯島氏に師事
岡本柚紀(おかもと・ゆき)/フードスタイリスト。2005年調理師専門学校卒業後、大阪でフードコーディネーターアシスタントを経て、2012年より飯島氏に師事
※ドラマ『かしましめし』最終話は5月29日(月)夜11時06分からテレビ東京系にて放送。TVerでリアルタイム配信もあり。地上波放送終了後、動画配信サービス『Paravi』『Lemino』にて配信。
◆取材・文/小林久乃