国際情報

「手土産は北の被爆者支援」岸田首相が衆議院解散前に目論む「日朝首脳会談」の現実味

岸田文雄首相が訪朝するとしたら

岸田文雄首相が訪朝するとしたら手土産は…(時事通信フォト)

 ホスト役を務めた広島のG7サミットを無事に終え、懸念事項となっていた長男で首相秘書官・翔太郎氏の「首相公邸忘年会騒動」も、息子の更迭で幕引きを図った岸田政権。不安要素を取り除いた先に岸田首相が見据えるのは「解散」だと言われる。だがその前に、支持率目当てで“一仕事”しようと目論んでいるとの情報が浮上した。そのお相手は、北朝鮮の金正恩総書記だというから穏やかではない。半島情勢に精通するジャーナリスト・李策氏がリポートする。

 * * *
 北朝鮮のパク・サンギル外務次官は5月29日、日本の岸田首相が前提条件なしの日朝首脳会談を提案してきたことに対し、「(日本が)大局的姿勢で新しい決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が互いに会えない理由がない」とする談話を発表した。朝鮮中央通信が伝えた。

 かねてから金正恩との首脳会談に意欲を見せていた岸田首相は、同27日に行なわれた拉致被害者の帰国を求める集会でも、「条件を付けずに、いつでも金正恩委員長と直接向き合う決意」としながら、トップ会談の早期実現に向け「ハイレベルで協議を行っていきたい」と語った。やにわに注目を集める日朝首脳会談だが、岸田首相と金正恩の早期の電撃対面は夢物語ではない。

 実は岸田首相は、安倍・菅の両首相とは異なる姿勢で北朝鮮へのアプローチを試みてきた政治家だ。菅政権までの日本政府は、北朝鮮の核・ミサイル問題と拉致問題を一体として圧力を加える方針を取ってきた。より具体的に言えば、米国政府に対し「たとえ北朝鮮の核問題で状況が改善しても、日本人拉致問題が解決しなければ対北関係の改善はない」と約束させることで、金正恩に行動を促そうとしたのだ。

 ところが金正恩は、対米関係の改善を後回しにして、核・ミサイル開発に邁進。そのため日本政府は、自分から核問題と拉致問題を「一体化」させてしまった手前、身動きが取れなくなっていた。

 そこで岸田首相は、改めて核問題と拉致問題を「分離」することで、北朝鮮に対して独自のアプローチを進めているのだ。もちろんそれには米国の了解が必要になるが、中台問題で日本政府が米国を強力に支持しているいま、バイデン大統領の支持を取り付けるのは難しくないだろう。

 北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との姿勢を崩していないが、突破口になると目されている人物が2人いる。拉致被害者の田中実さん=失踪当時(28)=と、拉致された可能性を排除できないとされる金田龍光さん=同(26)だ。

 田中さんと金田さんを巡っては、元外務次官らが北朝鮮での2人の生存情報を認め、北朝鮮による「一時帰国」の提案を当時の安倍政権が拒否したとの報道も出た。「安倍政権には、横田めぐみさんらの情報がないまま2人の帰国をもって北朝鮮に拉致問題の幕引きを許せば、『政権がもたない』との判断があったとされる」(政府関係筋)

 しかし最近になって、市民団体が2人の送還を求める声を上げ始め、何より高齢化に直面した家族会は、日本政府の行動を切実に求めている。拉致と核問題を分離する岸田首相の試みを後押しする空気が醸成され始めた。

 北朝鮮は現在、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」以来とされる食糧難の中にある。中国やロシアから食糧を調達しているとされるが、それとてすべて「タダ」というわけではない。日本政府としても核問題が横たわっている以上、拉致問題の部分的な進展だけで、対北関係の全面的な改善や支援は不可能だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン