「親を裏切ってしまった……」
「私のこと騙していないよね?」
「なんで俺が騙すの? 俺は長くこの投資をしているし、出金も何回もしている。ハニーがお金ないから俺も方法を考えているじゃん。だから安心して」
会ったこともない人間からのメッセージには、安心どころか不安だらけだった。その後も「愛している」、「代わりにお金を返すよ」という優しい言葉を掛けられたが、手元にお金が戻ってくる兆しは見えない。
やはり最初から騙されていたのではないか。
「ねえ、ねえ。私を騙したのね?」
沙也香はあらためて問い詰めた。
「そう、俺が騙した。ちゃんと生きるんだよ。すまんな」
「なんでそういうことをするの? 生きていけないわ」
やっぱり……。LINEでやり取りを始めてから、半信半疑の状態で揺れ動いていただけに、もっと警戒していたらと、悔やんでも悔やみきれなかった。甘い言葉も励ましも、すべて嘘だったのだ。そう考えると言い知れぬ怒りと憎しみが込み上げてきた。
「死ね死ね死ね……」
暗号資産の購入費用と手数料を合わせて失った総額は、1100万円。そのうちの200万円が父からの借金だった。黙って現金を用意してくれた父の優しさを思い浮かべるだけで、沙也香は今でも涙が溢れ出てくる。
「やっぱり1人娘みたいな感じだから、困っているなら助けてあげようっていうのが親心なんだと思います。今まで金融機関で借金なんてしたことなかったから、すぐに借りられました。怖かったです。親から『借金だけはダメ』と言われ続けてきたので、裏切ってしまったというか」
(第2回へ続く/本稿は『ルポ 国際ロマンス詐欺』の一部を抜粋・再構成したものです)