購入した暗号資産

被害女性が投資した暗号資産の管理画面。画面上の「USDT」とは、米ドル通貨に類似する価値を持つことを目的とした仮想通貨である

「親を裏切ってしまった……」

「私のこと騙していないよね?」
「なんで俺が騙すの? 俺は長くこの投資をしているし、出金も何回もしている。ハニーがお金ないから俺も方法を考えているじゃん。だから安心して」

 会ったこともない人間からのメッセージには、安心どころか不安だらけだった。その後も「愛している」、「代わりにお金を返すよ」という優しい言葉を掛けられたが、手元にお金が戻ってくる兆しは見えない。

 やはり最初から騙されていたのではないか。

「ねえ、ねえ。私を騙したのね?」

 沙也香はあらためて問い詰めた。

「そう、俺が騙した。ちゃんと生きるんだよ。すまんな」
「なんでそういうことをするの? 生きていけないわ」

 やっぱり……。LINEでやり取りを始めてから、半信半疑の状態で揺れ動いていただけに、もっと警戒していたらと、悔やんでも悔やみきれなかった。甘い言葉も励ましも、すべて嘘だったのだ。そう考えると言い知れぬ怒りと憎しみが込み上げてきた。

「死ね死ね死ね……」

 暗号資産の購入費用と手数料を合わせて失った総額は、1100万円。そのうちの200万円が父からの借金だった。黙って現金を用意してくれた父の優しさを思い浮かべるだけで、沙也香は今でも涙が溢れ出てくる。

「やっぱり1人娘みたいな感じだから、困っているなら助けてあげようっていうのが親心なんだと思います。今まで金融機関で借金なんてしたことなかったから、すぐに借りられました。怖かったです。親から『借金だけはダメ』と言われ続けてきたので、裏切ってしまったというか」

第2回へ続く/本稿は『ルポ 国際ロマンス詐欺』の一部を抜粋・再構成したものです)

関連キーワード

関連記事

トピックス

昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
1年時に8区の区間新記録を叩き出した大塚正美選手は、翌年は“花の2区”を走ると予想されていたが……(写真は1983年第59回大会で2区を走った大塚選手)
箱根駅伝で古豪・日体大を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈3〉元祖“山の大魔神”の記録に挑む5区への出走は「自ら志願した」
週刊ポスト
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン