国際情報

「詐欺師め、呪い殺してやる」 国際ロマンス詐欺で1100万円を失った28歳女性の後悔と「恨み節LINE」

(写真はイメージ)

中高年だけでなく、10代~20代の若年層にも広がる「ロマンス詐欺」の被害(写真はイメージ)

 SNSやマッチングアプリで別人になりすまし、金銭を騙し取る「ロマンス詐欺」の被害が後を絶たない。被害者は年齢は中高年だけでなく、10代~20代の若年層にも広がっている。この犯罪について取材を続け、近著に『ルポ 国際ロマンス詐欺』があるノンフィクションライターの水谷竹秀氏がレポートする(全3回の第1回。本文一部敬称略)。

 * * *
「詐欺師め、呪い殺してやる」

「死ね死ね死ねくそ人間死ね死ね死ね」

 いずれのメッセージも既読にはなっていなかった。これらはロマンス詐欺犯から「俺が騙した」という捨て台詞を吐かれた時に湧き上がった、反射的な怒りの返信だ。

「その時から手の震えが始まりました。ええ! 嘘でしょ! みたいな」

 そう語る本田沙也香(28歳、仮名)は、取材の合間、ネイビーの洒落た帽子を被り続けていた。透明の保護眼鏡をかけ、明るい色の口紅が目立つ。第一印象は華やかなイメージだが、私が出会った被害者の中で、騙されたことを最も根に持っているように見えた。被害直後のLINEメッセージならまだしも、会話の中でさえ、詐欺師のことを「ヤツ」「クソだ」と罵った。

 相手の名は「トニー」。写真の顔は眼鏡をかけ、クールで知的な印象だ。年齢は30代で、不動産投資家だという。

 沙也香は日本人であるが、生まれは中国だ。中国人の両親は幼い頃に離婚し、母が日本人と再婚したのを機に中学生の時に来日した。母はその後、中国に戻ってしまい、沙也香は父とともに日本で暮らす。日本の大学を卒業後、2つの職場を経て、現在はIT系の会社に勤めているOLである。日本語の読み書きには全く問題なく、もちろん中国語もできる。中国にいる母と連絡を取るため、中国のチャットアプリ「WeChat」を使っていた。そのアプリを通じてトニーと知り合った。

「こんにちは」

 中国語でのやり取りが始まり、間もなくLINEへ移行した。ある日、トニーは暗号資産の投資で儲かっているという話を始め、試しにやってみないかと誘ってきた。最初は少額で構わないからと、沙也香は5万円を元手に取引を始めた。すると6万円に増えた。

「元金を増やせば、利益はもっと大きくなるから」

 これは儲かるかもしれない──。淡い期待と欲望の裏には、沙也香自身が置かれていた環境も影響していた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン