伸さんが16才の頃、家族5人で2か月かけてアメリカ本土、欧州、ハワイを巡った。徹さん主導の珍道中は書籍に詳しく書かれている(パリのルーヴル美術館とセーヌ川を背に。右から、和政さん、泰伸さん、昌則さん)

伸さんが16才の頃、家族5人で2か月かけてアメリカ本土、欧州、ハワイを巡った。徹さん主導の珍道中は書籍に詳しく書かれている(パリのルーヴル美術館とセーヌ川を背に。右から、和政さん、泰伸さん、昌則さん/写真は家族提供)

 それはお金をかけなくてもできたと、泰伸さんは言う。例えば宝槻家では、激安のレンタルビデオ店からたくさん映画やドラマを借りてきて、それを一緒に見ていたという。

「NHKの大河ドラマもよく見ていたのですが、途中で“同じ武将の子でも、なぜこの時代は大切にされる子どもとそうでない子どもがいたのか”とか“家紋とは何か”などと疑問がわいてきたら、その都度ビデオを一時停止して、オヤジが解説してくれたり、家族で話し合ったりしていました。

 この方法なら、あまりお金はかかりません。もちろん、一緒に星空を見上げてもいいし、同じ本を読んで感想を言い合うのでもいい。こうした、親子で“感動を共有”することが、ぼくたち兄弟に世の中の見方を教えていたのだと思います」(泰伸さん・以下同)

 とにかくあらゆるジャンルに博識だった徹さんだが、一方で、家族が振り回されることも多かったという。

「突然、“九州の方が自然が多い”などと言い出したりして、何度引っ越したことか。知らない人をしょっちゅう家に連れて帰ってくるし、行き当たりばったりで朝令暮改も当たり前。最初のキャンプはとにかく大変でした(苦笑)。車に乗って家族で旅館に向かうはずが、たまたま通りかかった山でキャンプを楽しんでいる一行を見かけ、オヤジが突然、“いまからキャンプするぞ!”と言いだしたことがあったんです」

 キャンプ経験がないどころか、道具ひとつ持ち合わせていないのに、父親の言うがままに山麓まで戻って、適当にキャンプ用品を購入した。テントを張るも、大雨に降られて、寒いわ食べるものはないわという状態だった。

「結局、いちばん小さかった三男をダシに隣のテントに押しかけ、キャンプのイロハを教えていただきました。でも、これがきっかけでキャンプにハマり、宝槻家にとって恒例行事となりました。このときの体験はいまも忘れられません」

 このように、「宝槻家流の子育て」は、成功ばかりではない。失敗も同じように多かった。高価な望遠鏡を買ってきてくれたときも、3兄弟はほとんど興味を示さず、家の隅っこでほこりをかぶることになってしまったという。

「もし、映画『アポロ13』を見た直後に望遠鏡を買ってくれたなら、ぼくたち3人の反応は違ったのでしょう。新しいものを子どもに与えるときは、ただ高くていいものを買い与えればいいということではなくて、タイミングや与え方がとても大事だということです」

(第3回へ続く。第1回から読む

まんが/小出真朱 取材・文/角山祥道 取材/伏見友里 撮影/五十嵐美弥

※女性セブン2023年7月13日号

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