ハイパーサーミアの機器
治療は患者が専用機器の中で横になり、病巣のある場所付近に器具を設置し、体表の表と裏から腫瘍の場所に電磁波を当てて加温する。体の深い場所の病巣には波長の長いラジオ波で加温し、体表に近い場合にはマイクロ波を使う。
ただ43℃以上になると患者が苦痛を感じることがあるだけでなく、腫瘍内の温度を正確に測定するのが難しい技術的な問題もある。それでも肉腫のように放射線治療抵抗性のがんや、がん細胞が低酸素になり、放射線が効きにくいがんにはハイパーサーミアが効果を発揮するという。
「私の専門である放射線治療は、この10年で機器が飛躍的に進歩しました。放射線線量の細かい調整が可能になり、現在はピンポイントで必要な場所に照射できるようになっています。その点、ハイパーサーミアは機器の改良が遅く、普及にはそれらの進歩も欠かせません」(高橋教授)
今回のガイドラインには分子標的治療薬などを含む、新しい治療薬との併用試験の結果が反映されておらず、今後は臨床試験の実施を積み上げ、より科学的根拠を高めていく実績が求められている。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2023年7月14日号
高橋健夫/埼玉医科大学総合医療センター・放射線腫瘍科教授