『silent』に主演した川口春奈
フジテレビは過去にも、「『ヤングシナリオ大賞』の大賞受賞者を月9ドラマのオリジナルで早期連ドラデビューさせた」という歴史があります。2004年の第16回大賞受賞者の金子茂樹さんを2005年秋の『危険なアネキ』に、2014年の第26回大賞受賞者の倉光泰子さんを2016年春の『ラヴソング』に起用し、どちらもオリジナルで連ドラデビューさせました。局の中に「新人脚本家を起用していこう」という伝統があるのです。
そんな抜てきの背景にあるのは、「脚本家コンクールの最高峰であり続けている」という『フジテレビヤングシナリオ大賞』のブランド力。同賞はこれまで坂元裕二さん、野島伸司さん、安達奈緒子さん、野木亜希子さんらトップ脚本家を輩出してきたため、トップクラスの才能が集まりやすく、早期に活躍できる人が多いと見られているところがあるのです。
多忙な現役のプロデューサーや演出家が審査に当たっていることなども含め、脚本家志望者たちからの信頼も厚く、さらに『silent』で生方さんが早期の成功を収めたことで、今後も抜てきの流れは続いていくのではないでしょうか。
TBSが脚本コンクールを復活
そもそも新人脚本家の抜てきには、どんなメリットがあるのでしょうか。
最大のメリットは、スポンサーが求めるコア層(主に13~49歳)の視聴者層に近い感性の物語や人物を描けること。2010年代以降、ドラマ業界では脚本家の高齢化が不安視され続けていたこともあって、中堅やベテランには書けない設定や展開、セリフやト書きなどが期待されています。
新人脚本家をめぐる動きとして見逃せないのは、毎年開催されている『フジテレビヤングシナリオ大賞』『テレビ朝日新人シナリオ大賞』に加えて、TBSが6年ぶりにシナリオコンクールを復活したこと。『TBS NEXT WRITERS CHALLENGE 2023』という新プロジェクトを立ち上げて、新人脚本家を発掘・育成していこうとしているのです。「新人の感性や才能を生かしつつ、脚本や連ドラの基礎などを教えて育てていこう」という方針が局を超えて一致しているのでしょう。