国際情報

中国の若者の多くに「うつ病」リスク 政府によるゼロコロナ対策、厳しい統制、就職難などが影響か

不安にさいなまれている中国の若者たち

中国では不安にさいなまれている若者も

 中国政府傘下の中国疾病予防管理センターが発表した「2021~22年における中国国民精神衛生調査」によると、「中国の18~24歳のうつ病発症リスクは24.1%」であることが明らかになった。

 世界保健機関(WHO)によると、先進国では人口10万人当たりに平均9人強の精神科医がいるが、中国では現在、人口10万人当たりでは2人弱の精神科医しかいないことが分かっており、中国ではうつ病患者のわずか9.5%しか治療を受けていないのが実態だという。台湾紙「聯合報」が報じた。

 中国疾病予防管理センターが2023年6月に発表した調査によると、山東省のある大学の学生の21%が少なくとも1回はトラウマとなる出来事を経験しているという。

 その大きな原因と考えられるのは昨年12月まで3年間続けられた「ゼロコロナ政策」だ。その間、大学生らは大学寮などに軟禁されていたと同じ状況であり、同センターの調査では「この3年間で自殺者が相次いだ」と報告している。

 こうした状況に対して、学生の怒りが爆発したのは昨年11月、中国各地で学生らが中心となって起こした「白紙革命」だった。これは、中国各地で白い紙などを持って集まり、中国共産党のゼロコロナ政策を批判する抗議運動のことで、中国政府は1カ月後の昨年12月、厳しいゼロコロナ政策を解除した。しかし、それで若者たちの不安がすべてなくなったわけではなく、いまも大きな不安にさいなまれているのが現実だ。

 世界で自由を守るために活動する国際的なNGO団体「フリーダムハウス」の2023年の報告書によると、「中国政府は国家官僚、メディア、オンライン言論、宗教活動、大学、企業、市民団体など、生活のあらゆる側面に対する統制を強化し続けている」と指摘する。

 実際、習近平指導部の10年間で、政府による表現規制がますます拡大するなか、言論の自由の場が縮小していることも、若者の心理に影響を与えている。このほか、大卒の就職率が10%台と「大学卒業即失業者」という現実の厳しさや経済情勢の悪化などさまざまな要素が若者を精神的に追い詰めていると言っても過言ではないだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン