1972年、全国から集まった警察の賭博取締り担当官を前に花札を配ったりして賭博を実演する警視庁捜査4課のベテラン刑事(時事通信フォト)

1972年、全国から集まった警察の賭博取締り担当官を前に花札を配ったりして賭博を実演する警視庁捜査4課のベテラン刑事(時事通信フォト)

 ある時、駅前でひったくり事件が起きた。犯人はチンピラ風の若者でそのまま逃走。目撃情報から元刑事たちは現場近くを捜索した。今のように防犯カメラなどない時代だ。犯人の足取りを探すには、足で稼いて聞き込みするしかなかった。現場近くに地元の暴力団が組事務所を構えおり、元刑事たちはそこにも聞き込みに行った。「大きな部屋の真ん中には大きなソファが置かれ、テーブルをはさんで男たち数人が飯を食っていたのが見えた」と元刑事。

 突然の訪問に組員の1人が立ち上がり、「てめぇら何だ」と怒鳴ったという。すると上座に座っていた男が「おいお前、誰に物を言ってるんだ。座らんか」と組員を一喝した。「その顔をよく見ると、所轄の4課のベテラン刑事だった。完全にその場になじんでいたので、見ただけでは気がつかなかった」と元刑事は苦笑いした。

 ベテラン刑事はヤクザたちと似た服装で、同じ空気をまとっていたらしい。「それまでヤクザに関わったことがなかったので、見分けられなかった。いきり立ち慌てる組員たちと違い、一人だけえらく落ち着いていたから組長か組の幹部だろうと思った」(元刑事)。ベテラン刑事は組の様子を監視し情報収集するため、組事務所を訪れ組員らと雑談しながら飯を食っていたのだ。

今はクールビスで誰もがカジュアルな服装にスニーカー

 刑事、ヤクザその両方をよく知る銀座の飲食店のオーナーは、昔は刑事とヤクザを見分けるのは難しくなかったと話す。「着ている服や持ち物がブランド品や高級物であればヤクザ。安物だと刑事。ヤクザは仕立てのよい、体型にぴったりあったスーツやブランド物のスーツに、柔らかい革靴を履き海外の高級時計をはめていた。グレーや紺の地味なスーツで、型崩れしている、サイズが合っていない、手帳などで上着のポケットがふくらんでいるのは刑事。安い国産の腕時計が多かった」。

 しかし時代は変わり、ここに半グレが加わった。「ヤクザファッションの半グレが増え、暴対法や暴排条例でヤクザは地下に潜り、普通の会社員のような恰好をするようになった。高級物のブランドスーツを着ているのは幹部や組長クラスばかり。今はクールビスで誰もがカジュアルな服装にスニーカー。以前は地方のヤクザが銀座で飲んでも、ヤクザはヤクザとわかったが、今は外見や雰囲気では区別がつかないことも多い。もっとも今、派手に金を使うのはほとんど半グレ」(オーナー)。

「刑事は金を使わず、ヤクザは目立たぬ所で金を使う。半グレは目立つ所で目立つように金を使う」とオーナーはいう。今のご時世、3者を見分けるのは金の使い方かもしれない。

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