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都市部で急増する「納骨堂」に落とし穴 経営主体の宗教法人が破綻して突然閉鎖することも

納骨堂の落とし穴とは?(写真:イメージマート)

納骨堂の落とし穴とは?(写真:イメージマート)

 厚生労働省「衛生行政報告例」によると、2011年度の墓じまいの年間件数は全国で約7万7000件だったのに対し、2021年度には約11万9000件と、10年間で1.5倍に増加した。墓じまいにともなって「改葬」を考える人が近年増えているが、無事に墓じまいができたとしても、改葬先でトラブルが待ち受けるケースもある。

 昨今は寺や霊園の屋外墓地に建てる一般墓よりも割安で、永代供養を頼める「納骨堂」が注目を集めている。

 供養や終活についての情報提供を行なう鎌倉新書の調査によると、一般墓の購入費用の平均価格は150万円を超えるのに対し、納骨堂の費用は約80万円。手頃な価格ということもあり、急激に利用者が増えている半面、納骨堂を巡るトラブルも増加しているという。

 都市部に急増した納骨堂が突然閉鎖したことで、深刻な事態を招いたケースもある。

 今年5月の朝日新聞の報道によると、2022年に施設が閉鎖された札幌市内の納骨堂のケースでは経営主体の宗教法人が実質的に破綻し、利用者が遺骨の引き取りを求められる事態となった。土地と建物が差し押さえられたため利用者は納骨堂内部に入ることもできず、一部で置き去りになった遺骨もあると報じられている。

 納骨堂は葬儀会社などが宗教法人に資金を貸す形で建設、経営されるケースが多い。借り受けた宗教法人の資金繰りが悪化するなどで返済が滞れば、最悪の場合は納骨堂の土地や建物が債権者に差し押さえられる。また、「永代供養」を謳う納骨堂では、いずれ「合祀」が行なわれる点にも留意したい。葬送コンサルタントの吉川美津子氏が言う。

「納骨堂は契約時に『永代利用料』として20万~150万円程度を払うケースが多い。しかし、この場合の永代利用は永遠に同じ区画を利用し続けられるというわけではありません。納骨してから13年や33年などの節目で合祀されるケースが多く、遺骨がほかの人と混ざるため、その後の分骨や改葬などができなくなることもあります」

 そうした落とし穴を理解したうえで墓の移転先を決める必要がある。

※週刊ポスト2023年9月1日号

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