今年スタートした『ぽかぽか』(公式HPより)
視聴率の影響力は下がり続けている
しかし、昨年6月の港浩一社長就任以降は空気が一変。今年に入って『ぽかぽか』『私のバカせまい史』『THE SECOND』など笑いをベースにした番組を増やしたほか、『FNS27時間テレビ』も復活させました。「やっぱり、楽しくなければフジテレビじゃない」という今秋のキャッチフレーズは、裏を返せば「もう世帯視聴率狙いのようなコンセプトの新番組は作らず、『楽しい』を追求していく」という宣言にも見えるのです。
他局に目を移すとTBSが、かまいたち、モグライダー、見取り図、ニューヨークを集めた『ジョンソン』(月曜21時)をスタート。かつて人気を博した『リンカーン』の後継番組で「本気の笑いを届ける」と打ち出しているだけに、フジテレビ同様のニュアンスが感じられます。
2010年代は世帯視聴率狙いの手堅い番組が増えて、民放各局の番組が「面白くない」と言われる中、いち早く見切りをつけた日本テレビが現在までコア層の個人視聴率で独走。ただ、録画はもちろん配信での視聴が幅広い世代で定着するなど、リアルタイムで見る視聴率そのものの影響力が下がり続けています。
だからこそ、リアルタイムで見てもらうための構成・演出にこだわりすぎると視聴者の心は離れてしまうかもしれません。その意味で今秋、世帯視聴率狙いの番組を一掃できたとしても、コア層の個人視聴率を狙うだけでは足りず、配信再生数などの指標を含めた番組制作が求められていくでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。