島田さんと陽子さんは再び顔を見合わせた。
「そういうことになりますね」
「でも、そうしたら先ほどおっしゃってた犯人はA、というのと……」
「どういう順序でお話ししたらいいか……。Aという男は、口癖のようにこんなことを言っていたんです。俺は自分では手を下さない。金で動く人間はいくらでもいるんだ、と……」
なんだそれは。
「……かなり金を持ってるんですか」
「いつもズボンのポケットに札束をそのまま突っ込んでました」
「なんでそんなに金を持っているんですかね」
「車を売って月に一千万くらい稼いでいると言っていたそうです。金さえあればなんでも出来るって……」
「Aは詩織さんと交際していたわけですよね」
「ええ、ほんの一時期なんですけど……」
「詩織さんとはどこで知り合ったんですか」
事件の当事者が男と女である場合、それは重要な要素だ。どうしても避けては通れない。
「大宮駅の東口のゲームセンターで声をかけられたって。プリクラの機械が壊れていて……それがきっかけだったんです」
島田さんの膝の上で再び拳が震え出した。
「でも……それが間違いだったんです……」
詩織さんが初めて島田さんに相談を持ちかけたのは三月二十四日のことだった。
電話をもらって大宮駅近くで詩織さんと待ち合わせをした島田さんは、彼女の様子がどうもおかしいことに気がついた。特にお腹も空いていなかったが、話を聞こうと目の前にあった天ぷら屋に詩織さんを引っ張っていったのだという。