梅丸少女歌劇団の親会社の社長・大熊熊五郎を演じる升毅(写真/NHK提供)
数か月後に、関根氏は趣里と再び会った。
「バレエで味わった挫折から主人公と同じように寝込む時期があったこと、自分が演じることでなにか葛藤を抱えている人を支える力になれればという思いや、個人的な話もしてくれました。ご両親の話も出たかもしれませんが、僕にとってそこは覚えていないほど重要ではなかった。彼女は自分自身の人生をさらけ出してくれました」(同前)
劇中では主人公が全ての服を脱ぎながら全力疾走するシーンがある。
「その日は大寒波でしたが趣里さんは『私、寒くない』と言い出し、僕らが追いつけないくらいの気迫で感情を発露するシーンを演じきった。彼女の身体能力の高さから細かい動作の表現も美しかった。僕は『ブギウギ』も観てますが、さらにスキルを上げていて、芝居の凄みを見せつけてくれていると感じます」(同前)
『ブギウギ』でスズ子が入団した梅丸少女歌劇団の親会社の社長・大熊熊五郎を演じる升毅は、趣里とは初共演だった。
「先にスズ子の子役さん(澤井梨丘)と一緒に撮影をしていましたが、趣里さんと初めて顔を合わせた時に“小さい頃からずっと見てきたスズ子がここにいる”という感じで、初めて会った気がまったくしない不思議な心地よさを感じました。僕は幼い頃テレビなどで笠置シヅ子さんを見ていた記憶が鮮明にあります。趣里さんのお芝居を観ると、ご本人の姿が目に浮かんできます」
現場での“ぶつかり合い”も印象深いという。
「僕が演じる社長のもとにスズ子が怒鳴り込んでくるシーン(第15話)がありましたが、普通の俳優だとああいう振り切った演技はなかなかハマらず撮り直しになることが多いんです。でも趣里さんの場合、振り切った演技をしてもやりすぎた感じはなく、しかもどこか笑ってしまうようなところがある。天性のものを感じます」(同前)
同作が朝ドラ初出演となる蒼井優は、趣里についてこう語っている。
「なんでしょう、ヒロインへのこの気持ち(笑)。他の共演者やスタッフの皆さんも同じ気持ちだと思いますが、ただでさえ愛おしい趣里ちゃんがさらに愛おしくなります。(中略)朝ドラヒロインってこういうことなんだなと思いました」(『ブギウギ』サイトのインタビュー)
物語はこれから、趣里自身とも重なるヒロインが日本中を元気にする大スターへと成長していく。
※週刊ポスト2023年11月10日号