月組トップスターも経験した(写真は2022年)
どれだけつらくても黙々と日々の稽古に耐えていた天海だが、上級生に対し、怒りを露わにしたことがあった。もはや指導とは言えない「いじめ」を目撃したときだ。
「同期の1人が、本科生からいじめを受けたことがあったんです。そのとき天海さんは“1人だけをいじめないでください”と憤慨した。理不尽な理由で同期が課せられたトイレ掃除を、“私も一緒にやります”と買って出たこともあったそうです。
そうした上下関係を見てきたからでしょうね。天海さんが本科生になったときには“夢を見せる存在である宝塚が、こんな規律に縛られていてはいけない”と、リーダーシップをとってルール改革をしたそうです」(前出・別の演劇関係者)
「いくらかかったんですか?」
現在、宝塚全体を揺るがす有愛さんの自死の背景には、歌劇団内部にはびこるいじめ体質があったと囁かれている。今年2月には、『週刊文春』が、宙組所属の娘役・天彩峰里がヘアアイロンを押し当てて後輩の額をやけどさせたなどとする「いじめ疑惑」を報じた。被害者の「Aさん」とされたのが有愛さんだった。別の宝塚関係者が話す。
「有愛さんはこのやけど騒動当時“大ごとにしたくない”という姿勢でした。しかし記事が出たことで、有愛さんが“週刊誌にリークした犯人”と噂されるようになっていた。それが、彼女を二重に苦しめました」(現在、第三者チームによるヒアリングが行われているが、宝塚は結果の公表時期は「現時点では未定」と回答した)
天海もまた、陰湿な噂話に苦しめられたひとりだ。音楽学校を卒業し、月組に配属された天海は、それからわずか半年ほどで、入団7年目までのタカラジェンヌで公演を行う「新人公演」で主演に抜擢された。端的に言えば、6年分の先輩を追い抜いたことになる。
「入団1年目の主演抜擢は当時の歌劇団80年の歴史の中で初の快挙でした。歌劇団幹部からは、とにかく天海を大型男役として早く大成させるように、経験を積ませろと号令が出ていたそうです。もちろん、天海さんに実力があったことは言うまでもありません」(前出・演劇関係者)
だが、抜擢された天海に羨望と嫉妬の視線が向けられるようになった。
「『新人公演の主役を、カネで買った』という噂が流れたんです。それを信じた知り合いが、天海さんに直接“いくらかかったんですか?”と尋ねたこともあったそうです。
ほかにも『受験をせずスカウトだった』とか『5年でトップにするという密約で入った』『宝塚から契約金をもらった』といったものもあった。音楽学校の入学前に、一度モデルを務めたことから、そうした話になったのかもしれません。天海さんのそれまでの努力すべてをなかったことにされるようなものでした」(前出・演劇関係者)