ピンチのときも笑って受け止める
『カーネーション』
強くたくましいのも母なら、おおらかな優しさで娘を見守るのも母。3位にランクインしたのは、大正末期を舞台にした『カーネーション』(2011年)で四姉妹の母・千代を演じた麻生祐未(60才)だ。
「神戸のお嬢様だった千代はどこまでもマイペースでおっとり。父と娘のけんかを戸惑いながら見ていたり、長女の洋裁店を下手なりに手伝ったり不器用だけれども一生懸命で、こういうお母さんがいてもいいよねと思わせる、愛すべき存在でした」(吉田さん)
『マー姉ちゃん』(1979年=共同通信社)
1970年代の作品でありながら4位に輝いた『マー姉ちゃん』(1979年)の藤田弓子(78才)演じるはるも天真爛漫な母。コラムニストの桧山珠美さんはこう話す。
「底抜けに明るい敬虔なクリスチャンという役柄で家の蓄えを教会に寄付し、一家が困窮しても“なんとかなるわ”と常にポジティブ。風変わりではあるものの、藤田さんの柔和な笑顔によって憎めない母親像になっていた」
どんなときも娘の味方でいる
『まんぷく』(2018年)
母という存在は寄り添うだけでなく、時に娘の前に立ちはだかる。その代表格は『まんぷく』(2018年)の松坂慶子(71才)が好演した鈴だと、カトリーヌあやこさんは話す。
「言いたい放題、わがまま放題でも、松坂さんのチャーミングさによって愛されキャラに。源義経の末裔を自称して“武士の娘です”という決めぜりふから“ぶしむす”というニックネームがつけられ、SNSも盛り上がりました」
『ちりとてちん』(2007年)
娘とのすれ違いを描き共感を誘ったのは、6位に挙がった『ちりとてちん』(2007年)で頼りなくも魅力的な母を演じた和久井映見(52才)だ。
「“お母ちゃんみたいになりたくないの!”と叫んで家を出ようとする娘の喜代美に対して“お母ちゃんに謝れ!”と手をあげる夫に、“父ちゃん、やめて!”と必死で娘を守ろうとするやりとりは本当につらかった。だけど落語家になった喜代美は自分の母のように周りを明るく、輝かせる存在になりたいと最後は“お母ちゃん”になる道を選ぶんですよね」(『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』著者の田幸和歌子さん)
見る者の心を揺さぶり続ける朝ドラの母。その圧倒的な存在感が、ヒロインの成長を味わい深いものにしている。
※女性セブン2023年11月23日号