今話題のフェイクドキュメンタリー番組を次々と打ち出すテレビ東京・大森時生氏
Aマッソ起用のきっかけはW結婚スクープ
MCには、ちょうどコンビで既婚者であることがスクープされたばかりのAマッソが起用された。
「タイミングとしてもちょうどいいってなりましたね。最初は演者さんは決まってなかったんですよ。でも、スタジオでVTRを見る番組にしたほうがバラエティ感が出るなと思ったんです。それで、どこまで本当のことを言って、どこまで嘘を言っているかわからない、虚実の境界がそんなに見えない、かつ、ちゃんとスタジオで面白いトークをして成立してくれる人と考えたら、すぐにAマッソが浮かびました」
スタジオではAマッソの2人が「芸能人が奥様の悩みを解決する密着VTR」を見ながら、どこまで本気かわからないトークを挟んでいく。後半になるにつれ、見当違いともとれるような突拍子のない話も多くなっていく。
スタジオには密着VTRに登場するカルト集団の小道具なども置かれており、番組自体もカルト集団の一部であると示唆されているため、Aマッソが番組ではどのような立ち位置なのか、視聴者の間でも“考察”がおこなわれた。
「演者さんにもよると思うんですけど、基本的には細かい設定を伝えないほうがナチュラルになると僕は思っていて。お二人には番組の一番大事なポイントとなる概念とトークテーマだけをお伝えしました。台本はほとんどないです。
だってAマッソの加納さんが「ハムスターの鳴き声で肌がキレイになる」っておっしゃていましたが、僕には思いつきませんし(笑)。本当にわけのわからないことをすごいスムーズに話されていてびっくりしました。お二人のセンスですね」
『奥様ッソ』のスタッフには「構成」としてホラー作家の藤白圭がクレジットされている。
「『奥様ッソ』は、『放送禁止』でいうと初期よりは中期くらいのイメージで、ネットの「洒落怖」や「意味が分かると怖い話」とかに近い。番組内で何が起こっているのか示されずに分からない状態で終わるとちゃんと楽しみきれない層もあるので、『7~8割の人は、1回見れば大体何が起こっているかわかるもの』にしたいと思ったときに、藤白さんが浮かびました。
藤白さんは『意味が分かると怖い話』も出版されていて、それはフリがあってオチがあるショートショート。短い話の中でキュッと怖がらせるのを得意とされている方なので、やりたいことと合致しているなと思ってお願いしました」
TVerでは、本編で起きていたことの種明かしともいえる後日談もニュース番組の形で配信した。しかし、種明かしだけではない狙いが大森にはあったという。
「番組本編では、密着VTRに登場した夫婦や子供はもちろん名前で呼ばれているんですけど、いざ事件としてニュースで取り上げられると、長女は未成年だから名前が出ない。物語だと思ったものが、いざニュースになると抽象化されてしまう。そこで一気に現実に戻されるような感覚を表現したいと思って、ニュース番組というフォーマットを使って、TVerだけで単体であげるという形にしました」