2020年7月、風営法に基づく警視庁の立ち入りと合同で、新型コロナウイルス感染防止対策の周知のため歌舞伎町の店舗に向かう東京都の職員ら(時事通信フォト)
巨額な借金を背負うことになる「売り掛け」というシステムは、女性客を相手にするホストでだけ、異常な形へと変貌した。男性客が主体となっているキャバクラなどでは現在、ツケ払いそのものがまず、行われていない。現金、もしくはクレジットカード払いだ。もし、支払い時に金もクレジットカードもないとなれば、客は店のボーイに見張られながら、近くのATMで金を下ろして支払いが終わるまで解放されない。そもそも、金がないことを男性客が告げようものなら、まず門前払いになるのが当たり前だろう。ところが、同じことが女性客とホストの関係になると、通常の支払い能力を無視して借金を負わせる。
ホストクラブへの「売り掛け」で人生を狂わされる実態がどれほど報じられようと、自分の経済状況を上回る飲食をする客の自己責任だろうという見方もあるだろう。だが、社会経験が乏しい若い女性を狙い、判断力を失わせ、さらに強く言われると断れないタイプの女性をわざと狙って通わせていることを、あえて付言しておく。
「売り掛け」禁止のはず
大手ホストグループの多くでは「売り掛け」を禁止しているというが、結局、このシステムがないと客単価は上がらず、儲からない。だから、今なお売り掛けはホスト個人の判断ということで、店によっては公然と実行されている。また、ホストの報酬は店から現金で配られることがほとんどだが、売り掛けも含めて、事実上の税金対策になっている疑いがある。
「売り掛けの際、領収書が客に手渡されますが、金額が100万200万となっていても、収入印紙すら貼られておらず、これは店が税務申告をしていないことに他なりません。また、普通に数時間飲んで数百万の会計になることはあり得ないのですが、高額な酒のボトルの中身を安い酒に入れ替えたり、女性客を酩酊させて金額を上乗せするぼったくりが横行している。ハナから女性を騙すつもりしかないと思わずにはいられません」(前出の大手紙社会部記者)
新型コロナウイルスが感染拡大した当初、営業が続いていたホストクラブなどは感染爆発の温床とみなされ、これを機に業界が縮小していくとの予測もあった。ところが、自治体の要請を無視して営業を続ける店が続出し、通う客は途切れず、アフターコロナと言われる今では、ホスト業界はかつてないほどの活況ぶりだとまで言われている。
当然、非難されても無視して営業を続けるような店では、売り掛けシステムなどを用いて女性を「カタにはめる」、借金漬けにして強引に言うことをきかせるホストが主流だ。そして彼らが派手に振るまい、儲かって成功していると誇示すると、適切な接客より拝金主義をよしとするホストが続く。そう訴えるのは、かつてホストにハマっていた経験がある都内在住のメーカー勤務・横田みゆきさん(仮名・30代)だ。
「コロナ禍直前の話ですが、担当(ホスト)への売り掛けが200万ほどになり、返済が苦しくなったんです。それまで優しかった担当は、払えないなら風呂(※ソープランドなどの風俗店)にいくか、親から借りろと凄んできました。結局、消費者金融から借金をして、男性の友人と一緒にお店にお金を持って行きましたが、店は受け取らなかった。”うちは売り掛けは禁止なので”と言うんです。でも、私が売り掛けしているところは店のホスト全員が見ている。男性の友人が横で見ていたことがよかったんでしょう。担当からは”個人的にもってこい”と怒鳴られましたが、警察などにも相談し、結局払っていません。払う人は、ホストによって金を支払う状況に追い込まれる”カタ”にはめられ、人生を狂わされてしまう。そういう女性が次から次に被害に遭っているからホストが活況なんです」(横田さん)