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「売り掛け」をめぐるホストクラブの闇 逆襲に怯えるホストも増え始めた

悪質ホスト対策を政府の担当者に要請する立憲民主党の長妻昭政調会長(左から3人目)ら。2023年11月17日(時事通信フォト)

悪質ホスト対策を政府の担当者に要請する立憲民主党の長妻昭政調会長(左から3人目)、塩村あやか議員(左から4人目)ら。2023年11月17日(時事通信フォト)

「悪貨は良貨を駆逐する」とは、質の悪いものが世の中にはびこってしまうときに使われる言い回しだ。顧客満足度がビジネスの鍵になるはずのサービス業でも似たようなことが起きていて、隆盛するばかりと思われてきたホスト業界に強い逆風が吹き始めている。それに伴って、ホストたちの間ではいま恐怖と不安がじわじわ広がっている。ライターの宮添優氏が、変化が起きようとしているホストと女性客の関係についてレポートする。

 * * *
 ホスト業界が、これまでにないほど揺れている。大きな動揺の理由は複数ある。

 ホストの聖地と呼ばれる新宿・歌舞伎町からほど近い、区立公園周辺に夜な夜な立つ、通称「立ちんぼ」と呼ばれる、男性客を待つ若い女性たちの存在が話題になったこと。さらに女性たちの様子が報じられるなかで、多くがホストクラブに通うための資金稼ぎだったことが「バレた」。また、ホストにはまった女性が、一般男性から多額の金をだまし取ったり、だまし取るマニュアルを作成・販売していたとして逮捕されるなどの事例も起きている。

 女性たちの苦境が報じられるに伴って知られるようになった独特の商習慣も、世間からホスト業界が不信を買う原因になっている。代表的なものが「売り掛け」というツケのシステムだ。ニュースで報じられる元ホストの客だった女性や、娘がホスト通いから抜け出せず人生が壊されたと訴える母親の証言などにたびたび「売り掛け」という言葉が登場し、ホストクラブとは無関係に生活する人々にも知られるようになった。ある国政政党は「売り掛け」を禁止するよう訴えるなどしており、警察も厳しい指導や取締りをすると国会で答弁している。

無効にされる前に「売り掛け」回収

 筆者の取材に応じた複数のホストが「売り掛けを早急に回収しないとまずい」と焦っている。一部政治家たちの働きかけにより、売り掛け自体が「無効」とされる可能性が出てきたため、その前に終わらせようと執拗な「取り立て」も行われているという。大手グループ傘下のホストクラブに勤務する光河さん(仮名・20代)は、こう打ち明ける。

「売り掛けは、ホストにとっては店からの借金です。客が払わないならホストが返すしかない。女性を追い込むような回収行為が横行したり、逆に回収できなくなったホストが別の事件を起こして金を作ろうとしたり、すでにトラブルが頻発しているという話も聞いています」

「売り掛け」とは、本来は簿記や会計で使われている用語で、代金を後で支払うことを前提に商品を売ることを言う。それが転じて、飲食やサービスの代金をその場で受け取らず、後からまとめて支払う客の未払い金を呼ぶときにホスト業界では使っている。すべてのホストクラブやホストがそのシステムを採っているわけではないのだが、売り掛けによって大きな金額を動かし派手に振る舞うホストは目立つため、業界全体への非難に繋がった。

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