別の国立大学の幹部の中国人C氏はリポート上で、軍事関連技術研究を行なう機関であり、千人計画や人民解放軍と関係が深いとされている「国防7校(国防7大学)」出身と書かれている。
「大学幹部の教授らは、中国と日本との共同研究を推進するなど学術交流を締結しており、中国人留学生の招致や、中国への留学の橋渡しを決定できる立場にある」(同前)
そういった大学幹部が啓明などの人材招致活動の窓口になっている可能性があるということだ。
B氏、C氏それぞれに話を聞くと、B氏は大学側が「過去も現在も(B氏は)千人計画と啓明には全く関与していない。本学においては役員等の要職者に関して、他の職員以上にリスク管理をしっかりと行なっている」と回答し、C氏は期限までに回答はなかった。
リポートの中国人留学生に関する部分には、ある日本有数の名門国立大学の2022年度の研究実態についての記述がある。資料を見ると、研究プログラムで日本政府の奨学金を受けている学生のうち、半数近くは中国人留学生であることがわかる。
「留学生が学位取得後、日本で得た技術や研究などを中国に持ち帰るなどして啓明に組み込まれるリスクが高いと見ており、注視している」(前出・政府関係者)
果たして日本は、この新たな脅威に対応して自国の人材や技術の流出を防げるのだろうか。
【プロフィール】
山田敏弘(やまだ・としひろ)/1974年、滋賀県生まれ。国際ジャーナリスト。1999年米ネバダ大学ジャーナリズム学部卒業。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版編集記者などを経て、米マサチューセッツ工科大学で国際情勢やサイバーセキュリティ、インテリジェンスの研究・取材活動にあたった。帰国後はジャーナリストとして活躍。著書に『世界のスパイから喰いモノにされる日本』(講談社)など。
※週刊ポスト2023年12月1日号