人材獲得に手を尽くそうとしてきた(すでに消滅している千人計画のウェブサイト)
日本でも人材リクルートの活動は確認されている。啓明の指揮下では、ビジネス特化型SNSがよく使われているという。
都内で防衛関連企業に勤めるA氏は、今年8月に上海市やシンガポールの大学研究機関に勤めていると名乗る中国人男性から、ビジネス特化型SNSを通じてメッセージを受け取った。何度かのやり取りを経て、中国人男性は自身のクライアントの依頼だとして、A氏の勤務先が扱う「CNC(コンピュータ数値制御)」について研究論文を書いてほしいと依頼してきた。「秘密保持契約を結んでいる」との理由でクライアントについては詳述せず、「クライアントは論文などの費用を支払いたいと言っている」と伝えてきたという。
それ以降のやり取りは、メッセージを暗号化したり、一定時間後にやり取りが消える機能などを持つアプリ「テレグラム」で行なうよう提案してきた。
怪しいと思ったA氏は、知人に頼んでプロフィールに使われている顔写真を調べてみると、まったくの別人が見つかった。つまり別人の顔写真を使ってリクルート活動を行なっていたのである。
「ビジネス特化型SNSやテレグラムを使って論文の執筆を求めたり、共同研究を持ちかけるパターンは、啓明などのリクルートの一環として行なわれている可能性が高い。また(情報工作を行なう)中国共産党中央統一戦線工作部が協力していると考えられます」(前出・中央組織部の元職員)
「国防7校」の出身者
千人計画のもとで、日本の学術界でリクルート活動を行なってきたとされる中国人関係者らも、啓明の活動に組み込まれている可能性がある。
筆者が極秘に入手した日本政府の調査リポートには、新たな人材招致活動を意識した上で、日本の大学に勤める中国人職員や、日本政府の研究費を獲得した国立大学の中国人留学生の研究内容がまとめられている。これらのリポートは、千人計画が休止して以降の日本における中国の活動実態を改めて調べたものだ。
日本の大学に在籍する中国人教授には、要職に就く人も少なくない。このリポート作成に関わった政府関係者はこう言う。
「彼らの中には、学内の先端技術の研究開発だけでなく、大学などの教育・研究機関と企業が連携する産学連携の情報など、すべてにアクセスできる教授も複数いる」
例えば、リポートのリストに名前があげられたある国立大学の中国人幹部B氏は、同資料によると、幹部に就任する前に中国で千人計画に選出されていたことが指摘されている。