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カドミウム吸収を抑えた画期的なコメの新品種「あきたこまちR」 福島みずほ議員らの“安全性への疑問”は妥当なのか

「より安全な新品種」が開発されたブランド米・あきたこまち(時事通信フォト)

「より安全な新品種」が開発されたブランド米・あきたこまち(時事通信フォト)

 土壌のカドミウムをほとんど吸収しないコメの新品種「あきたこまちR」をご存じだろうか。「あきたこまちR」は品種改良技術により開発されたコメで、食品の安全に関する著書が多数ある科学ジャーナリストの松永和紀氏は「日本のコメが抱える問題を解決できる画期的な品種です」と評価する。秋田県では2025年からコメの栽培品種を、従来のあきたこまちからあきたこまちRに全量転換する方針だ。

 ところが、11月9日、社民党の福島みずほ参院議員がX(旧ツイッター)で〈消費者の権利を守りたい!〉と投稿し、「2025年秋田県全量転換 放射線育種米あきたこまちR 何が問題なのか」と題した報告会の開催を知らせるポスター画像を添えた。ポスターには、あきたこまちRへの全量転換を問題視する記述がある。なぜこうも評価が異なるのか。

 そもそも「あきたこまちR」はどんな新品種なのか。農水省や秋田県による資料などを読むと、前述の通り、その第一の特徴は放射線育種という品種改良技術により「カドミウム吸収性が極めて低くなった」点にある。

 イタイイタイ病(富山県の神通川流域で起きた公害病)の原因にもなった重金属カドミウムは、鉱山等から流れる川から流域に広がっており、水稲栽培のコメはそれを吸収しやすい性質を持つ。コメを主食とする日本では、カドミウム摂取の約4割がコメからで(厚労省調べ)、諸外国に比べ摂取量が多いとされる。

 もちろん、食品衛生法の基準値(0.4ppm)を上回るコメは流通しないよう管理され、健康への影響も確認されていないが、カドミウムは体内に蓄積されるため、摂取量はわずかでも長年食べ続けた場合の不安は残る。また、日本からコメを輸出しようとしたときに、日本より厳しい基準値を設定している国もあり、そのカドミウム値がネックになる可能性もある。

 日本人の主食であり、主要作物でもあるコメについて、長年の課題をクリアする可能性を持つあきたこまちRに、関係者らが大きな期待を寄せるのも十分頷ける。

 しかし、11月14日に参議院議員会館で開かれた前出の報告会をZoom配信で視聴したところ、福島氏をはじめとする登壇者から、あきたこまちRへの疑問や不信がさまざまに語られていた。

福島みずほ氏がXに投稿したもの(旧Twitterより)

福島みずほ参院議員が投稿した内容(X=旧Twitterより)

安全上の問題は「見出されていない」

 報告会では、従来のガンマ線ではなく、重イオンビーム(放射線の一種)を使った放射線育種が問題視され、「あきたこまちRは安全性が確認されていない」と主張されていた。

 放射線育種とは、自然界でも自然放射線や宇宙線、紫外線などによってDNAの一部が傷ついて起きる植物の突然変異を、人工的な放射線の照射によって起こし、品種改良をする手法である。

 放射線育種自体は最新技術でもなんでもなく、日本では1950年代から利用されてきた。冷害に強く、倒れにくいコメ「レイメイ」や、ナシ黒斑病に抵抗性をもつナシ「ゴールド二十世紀」などは放射線育種でできた品種である。もはや伝統的な手法と言え、安全性に問題が生じたことはない。言うまでもないことだが、放射線育種だからといって、できた作物がその他の品種に比べて多量の放射性物質が含まれるわけでは、もちろんない。

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