──表に出せないお金としてあるということだが、何も記録を残さないというのはおかしいのでは? ある程度時間がたってから事後的に検証できるようにすべきでしょう。
「公式な記録は残していませんし、領収書も必要ありません。しかし、私は自分でノートに記録をつけていました。それがないと自分でもわからなくなりますから。
たしかに報償費のあり方というのも、時代に合わせて見直していく余地はあると思います。このまま何の記録も残さずに続けていくというのは、世間の理解を得られないだろうしね。そうすれば馳さんの発言のような騒ぎもなくなるのではないでしょうか」
歴代長官が語らなかった官房機密費の使途。すべてが語られた訳ではないが、一端でも語ったことに意義があるだろう。政界での評価より後世に事実を伝えることを優先した判断だったと思う。
【プロフィール】
相澤冬樹(あいざわ・ふゆき)/1962年宮崎県生まれ。東大法学部卒、1987、NHK入局。2018年、森友事件の取材の最中に記者職を解かれNHKを退局。財務省の決裁文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんの手記を遺族から託されてスクープした。現在はフリージャーナリスト。主な著書に『メディアの闇―「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相』など。
※週刊ポスト2023年12月15日号