渡邊昌彦医師

渡邊昌彦医師

 がん細胞が粘膜より深く潜り込んでいる場合は、肝臓や肺への遠隔転移や腹膜播種がない限り、手術の適応となる。従来、大腸がんの手術は大きくお腹を開ける「開腹手術」が行われてきたが、近年は技術の進歩によりお腹に数cmの穴を4〜5個開けて、そこから細長い手術器具や内視鏡カメラを挿入し、モニターで内部(腹腔内)の様子を見ながら操作する「腹腔鏡下手術」が主流となっている。

 前出の渡邊医師は母校の慶應義塾大学病院で、1992年に日本で初めて大腸がんの腹腔鏡下手術を行ったパイオニアのひとりだ。その渡邊医師や先輩医師から指導を受け、現在は北陸の大腸がん診療をリードする厚生連高岡病院(富山県)消化器外科診療部長の小竹優範医師が腹腔鏡下手術のメリットをこう話す。

「傷が小さいだけではなく、手術をした後の回復が開腹手術と比べ明らかに早いことです。翌日から歩いたり、立ち上がったりできます。

 開腹しなくとも手術を行っている手元を拡大して見ることができるので、細かく把握できます。カメラの解像度が上がり、立体視もできるようになって、より鮮明に見ることができるようになったため血管を誤って切ることが少なくなり、輸血もほとんど必要なくなりました。

 神経も温存しやすくなって、排便・排尿に性機能障害や人工肛門になる確率も下がっています。さらに、術後に腸管が癒着することによって起きる腸閉塞も減らすことができます。腹腔鏡のおかげで患者さんの負担が軽くなりました。その恩恵は大きいと思います」

 加えて2018年に直腸がん、2022年4月には結腸がんに、米国製の手術支援ロボット「ダヴィンチ」が保険適用となった。それをきっかけに、大腸がん手術でもロボット手術が急速に普及し、2022年12月には国産ロボットの「hinotori」も、消化器外科領域と婦人科領域で保険適用となったほか、米国製の「Hugo」なども大腸がんの手術にも保険適用された。

 患者のお腹に小さな傷を3〜4か所つけ、細長い手術器具や内視鏡カメラのついたロボットアームを挿入する。術者は、少し離れた場所にあるコンソール(操作台)に座り、3D画像が映るレンズやモニターを見ながら遠隔操作する。それがロボット手術の仕組みだ。

そうした最新技術を取り入れているかどうかも、病院選びのポイントの1つといえるだろう。ロボット手術の優位点について、獨協医科大学大学院腫瘍外科教授で下部消化管治療センターの中村隆俊医師はこう説明する。

「カメラや手術器具の手ぶれを防止する機能がついていて、骨盤の奥深く狭いところでも器具を自由な角度で動かせるため、直腸がんに関してはメリットが大きいと感じています。術後の排尿障害や性機能障害もおそらく減るでしょう。

 また、いちばんは少人数で手術できること。腹腔鏡下手術は術者に加え器具やカメラを補助する助手が必要で、その3人が全員ともある程度の技術を持っていなければなりません。しかしロボット手術ならば、それらを1人または2人の医師でこなすことができ、その分の人手をほかの患者さんのケアに回すことができる。

さらに、結腸がんのロボット手術は保険収載されたことで本格的に開始されました。そのため症例数は徐々に増えてきている状況です」

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