小竹優範医師
「がん治療は、診療科の垣根を越えて行う『集学的治療』が不可欠です。治療方針の見立てが、外科医と他科の専門医とでは、微妙にずれることがあり、それらをすり合わせて集合的な治療を施すことでより高い効果を目指せるからです。当院でもがん種ごとに週1回、各診療科の医師や看護師などが集まって、一人ひとりの患者さんの症例を検討する『キャンサーボード』を実施していますが、それがきちんと行われている施設を選ぶことも重要です。
また直腸がんの場合、がんの進行度や位置によってはストーマ(人工肛門)を作る必要があります。肛門を温存するかどうか、またストーマにした場合どうQOL(生活の質)を保つべきかといった課題を一緒に考えてくれる医師や病院であるかどうかも重視すべきポイントです。例えば、院内に『ストーマ外来』を併設している病院は医師や看護師がサポートする体制ができていると言えるでしょう」
乳がんと同じく患者さんに寄り添う姿勢を持ってくれているかどうかも、施設や医師を選ぶ上で重要なのは言うまでもない。前出の渡邊医師が話す。
「皆保険制度が整備されている日本では、使える薬も機器もお金によって区別や差別はありません。ですから、誰もが最高の治療を受けられるという環境においては、日本は世界一です。内視鏡や手術の技術も、日本の医師たちが世界トップレベルにあるのは間違いありません。
ただ、医師が忘れてはならない重要な点は、患者さんのバックグラウンドを踏まえて、その人にとってどのような治療法が最善かを考えて提示することだと私は思うのです。
ほかのがんと同様、大腸がんにも診療ガイドラインが作られており、それに基づいて治療を選択することは大切です。しかし、残念ながら、それをそのまま患者さんに提示して『選んでください』という医師も少なくありません。それで困ってしまった患者さんから、私に連絡が来ることもあります。やはり、患者さんとよく相談しながら、治療法を提供していくことが重要だと思います。
患者さんは命がけで治療を受けるのですから、医師もまた、それに応ずる最新の知識を備え技術を磨いておくことが大切です。それらを駆使して、いかに患者さんを幸せにすることができるか。それが、私たち医師に課せられた使命です」
後悔のないがん治療を受けるためには、患者側も最新の情報とともに、医療者の思いを知っておくべきだろう。ぜひ、あなたに合った最高の主治医を見つけてほしい。
(了。前編から読む)
●ジャーナリスト・鳥集徹と本誌取材班
※女性セブン2024年1月4・11日号
女性セブンが取材した大腸がんの名医
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