雅子さんは角栄邸では線香をあげたという(写真は筆者撮影)
朝日新聞でボツになった「投稿」
だが、そんな雅子さんに強力な“助っ人”が現われた。田中眞紀子元外相だ。田中角栄元首相の娘である眞紀子さんと雅子さんを結ぶ縁は、裁判の認諾がきっかけだった。認諾後、雅子さんの代理人弁護士のもとに手紙が届いた。手紙には「認諾について朝日新聞のオピニオン欄に投稿したが、社内での編集会議の末“没”となり紙面掲載は叶わなかった。せめて雅子さん本人にお伝えしたく、投稿を同封した」と手書きで丁寧に書かれていた。
その投稿には、こう書かれていた。
「この裁判の行方を固唾を吞んで見守ってきた多くの国民は、呆気に取られ、やがてやり切れない思いに胸を塞がれたに違いない。もしこれが自分の身に降りかかった災難であったならばと考えると、国家権力のご都合主義と非情さに憤りを覚える。殊に、この結末に対する岸田総理や関係者のおざなりなコメントからはヒトカケラの愛情も感じられなかった」
事件のの発端は、国が森友学園に国有地を8億円以上も値引きして1億3400万円で売り払ったことにある。時の安倍首相の妻、昭恵さんが小学校の名誉校長に就任していたことがわかり、疑惑の目が向けられることになった。そのことについて投稿では、
「低廉売却を指摘されると、自己保身のために白々しい強弁や、姑息な手段で言い逃れを繰り返す。そうした人物が政治権力を握っている限り、公僕たる役人は“忖度”という曖昧な表現で、これまた自己保身に走り、行き詰まると弱い立場にいる役人に改ざんを命じてシラを切り通す。赤木(俊夫)さんの痛ましい自死と、未亡人の怒りと嘆きは想像するに余りある」
政治の質の劣化について「政治に関わる人々の利己的で冷淡な態度がある」と指摘した上で、「このことが社会全体から温かさを奪い、政治に対する不信感を醸成していると思われる」と分析。「赤木さんの事件やそのご家族の悲嘆を他人事として、その基本的人権に思いを致すこともない政治家たち」に怒りの矛先を向けた上で「日本が真の民主主義国家となるためには、国民一人一人が客観的ファクト(事実)をしっかりと積み上げて、冷静かつ論理的に分析する力を日常的に涵養することが必須である」と結んでいる。