8インチフロッピーディスクドライブ(駆動)装置とパソコンPC-9801[NEC(日本電気)提供](時事通信フォト)
そこで経産省はデジタル庁の掲げる「デジタル原則」に従う形で、2023年末をもってフロッピーディスクの使用指定を撤廃することとした。有限責任事業組合だけでなく商店街振興組合法や商工会法、商工会議所法、電気事業法、アルコール事業法など34の省令でフロッピーディスクによる申請や届出が廃止となった。経産省は「今後も技術の発展などに伴いアナログ規制の不断の見直しを行います」としている。
オンラインソフトウェアの販売を手掛けるIT企業のベテランスタッフ(40代)が語る。
「まだフロッピーが使われている業界はありますね。とくに地方の役所や学校、医療関係でしょうか。もちろんどこも、若手は面食らってると思いますよ」
本稿、フロッピーディスクもフロッピーディスクドライブもひっくるめて「フロッピー」とするが、さまざまな理由でシステムを入れ替えられない、もしくは使い慣れているからと旧来のシステムをそのまま使う場合はある。筆者も仕事としては出版業界で1990年代まで親指シフト、DTPソフトは2010年前後までQuark(当時としても大変高価なDTPソフト)、2012年くらいまでMOディスクを併用していた。それぞれの説明は置くが、親指シフトは打ち慣れているから、Quarkは使い慣れているから、そしてMOは2000年代の大量の過去データが記録されていたから、であった。
「フロッピーディスクもそういった理由があるとは思いますが、セキュリティとして有用だったという面もあるんです。だからまあ、それが免罪符でずっと使われてきたというか、FAXと同じですね」
確かに冒頭書いたように笑ってしまうような容量、その上の2HDでもおおよそ1.44MBである。すべてではないが、現行のウイルスのほとんどは入る隙すらないような容量だ。これがUSBなら5000円も出せば512GBのUSBメモリが買える時代(ノーブランド品や特売ならもっと安い)、しかしUSBメモリを経由したウイルス感染は後を絶たない。筆者は仕事で一般の高齢者からUSBメモリが渡されることがあるが、困ったことに多くはウイルス入りのことが多い(何をしているのか知らないが、本当に多い)。そう考えれば、確かにセキュリティ上の安全性は高いように思う。
しかし、FAXもそうだが安全だからといつまでもフロッピーディスクを使うわけにもいかない。それでも一部業界、界隈では細々と使われてきた、デジタル庁はこれを国として、まず省令に関することから国が率先して変えようとしている、ということか。
「それはそうでしょう、安全とはいえフロッピーディスクドライブなんて新品のパソコン買ってもオプションで指定しなければついてこないし、業務用でもディスクドライブを廃止しているメーカーは多いです。そもそもフロッピーディスクそのものが高いし手に入りづらい、オンライン化を推進しているデジタル庁がフロッピーを指定なんて、さすがに見直すしかなかったのでしょう」
この「手に入りづらくなる」は重要なきっかけで、先の筆者の経験上なら親指シフトはWindowsの普及とワープロの衰退、当時は勤め人だったので編集部の共用パソコン(とくにDTP用のMac)を使う機会を考え個人的に決心した(いまでも親指シフト、細々と対応している業者はあるし、いまだに執筆に使っている小説家もいる)。またQuarkは業界全体でInDesignが主流となり、それに揃える形にしたこと、MOはフロッピーと同様に急激に新品のドライブそのものが手に入りづらくなったこと、その代替となる外付けハードディスクやUSBメモリが大容量かつ激安、高速になったことにある。