安曇野市で悠々自適なセカンドライフを送る
地元農家は「なんで教えないといけないの」
だが、初めての土地で農業を行うことは苦難の連続だった。
「長野に移住すると決めた段階で農業を始めることは頭になく、家庭菜園で自分たちが食べるくらいが賄えればというくらいにしか考えていませんでした。しかし、若い農家の方たちの話を聞き、実際に現場を見ていくうちにだんだん農業に興味が湧いてきてしまったんです。自分が毎朝ヨーグルトに冷凍のブルーベリーを入れて食べていることもあって、ある時、農家の方に『どうせなら野菜のついでにブルーベリーでも作ってみたら』と言われて、『よし、やってみよう』と思いました。
でも、そもそもの作り方も分からない。そこで、長野のブルーベリー農家を周ってみることにしました。その中であるファームに『作り方を教えてください』とお願いしました。もちろん『なんで教えないといけないの』と言われましたよ(笑)。今まで柔道しかしてこなかったおっさんが、なんの知識もなく、冒険気分で『教えてください』と言っても、断るのは当たり前ですよね。それでも2度3度頼み込んだら思いが伝わったのか『教えたろか』と。僕もどうせ作るなら販売できるくらいの規模でやってみようと決意しました」
家庭菜園とは違い、農業には適した広さの土地が必要となる。篠原さんは土地探しで1年ほど要し、2020年にようやくブルーベリー園『しのふぁ~む』を開園した。移住当初は篠原の行動に半信半疑だった地元の農家だが、その関係に変化が起きるように。